米国DMA&企業視察17年のヒストリー そのD

1994年7月25日〜31日 NCDM大会(シカゴ)


初めてデータベース・マーケティング研修ツアー企画。リクルート様、大広様、西川印刷様、日本生命様参加。
※添乗員なしでツアーを実行。ニューヨークに到着し、そのまま乗り換えてボストンに直行する予定だった。ところが嵐でボストン空港閉鎖のため全便欠航。どうしようもなく右往左往。午前1時近くになってバスが出るとの情報。6人はバスに分乗して3時間かけてボストン空港へ到着。朝の4時だった。最悪の初日。翌日、ボストンでは、デービスの案内でボストン銀行(B-to-Bマーケティングの説明を受ける)など訪問。ボストンからシカゴに入りDMAに参加する。

<オープニングセッション>
・ ステファン.C.ホーン
ダン&ブラッドストリート・インフォメーション・サービス
リテンション・マーケティングの重要性についての講演。
「あなたは顧客が誰か知っているか」「ベストな見込み客は誰か知っているか」「その見込み客は既存顧客に似ているか」。
現在、ほとんどの企業はリエンジニアリングからリストラクチャーへとコスト削減に注目しているが、ダウンサイズしながら能力を高める必要がある。企業カルチャーの変化が必要であるが、変化を引き起こす情報が不足している。MIS部門は財務好きで、資源は不足しており、時間もなく、ツールも不足、インフラ不足になっている。
マーケティングが新しい局面に入っている。それは既存顧客を維持することによる利益と新規顧客獲得努力から得られた利益との比較である。5%の顧客離れを防ぐことによって利益改善は20〜125%になる。この解決には「情報の統合化」が必要である。

<ゼネラルセッション>
One Customer at Time
未来の新マーケティング・パラダイム1:1マーケティング
1:1マーケティングで有名になったドン・ペパーズがゲスト講演
ドン・ペパーズはマーケティング1.1(コネティカット州)の創設者および社長。
リレーションシップ・マーケティングやマーケティングテクノロジーに関する経営コンサルティングを行なう。(『One to One Future:Building Relationships One Customer at a Time』・1993年)ダイヤモンド社邦訳
※(ドン・ペパーズ「one to one」ブームが起こる最初の本、展示会場で無料配布)
7つのポイントを述べた。
・ 顧客と企業との継続的な接触―ラーニングリレーションシップ
・ 顧客のニーズをすべて完全に満たすことに目標を置く
・ 商品を購入してくれる顧客を探すのではなく、顧客のために商品を探し出すことに焦点をあてる
・ マーケットシェアからカスタマーシェアへ(財布シェア)
・ 経済スケール(額)ではなく経済機会に注目
・ 製品の差ではなく顧客の差に注目
・ 製品マネジャー性(企業内部志向)から顧客マネジャー性(企業外部志向)へ
パネルディスカッション
デイトンハドソン 顧客開発マネジャー
この年の15ヶ月前からデータベース・マーケティングを始めたが皆がそれぞれ違うピクチャーを持っていて理解の統一に大変だった。マスマーケティングをずっとやってきた小売業は根本的に考え方を買えなくてはならない。これが大変。いつもカスタマー・フォーカスの心を忘れないでアドバイスしたい。
チェースマンハッタン データベース・マーケティング・ディレクター
われわれは世帯とのリレーションシップを非常に重要と考えている。組織内にセグメント・マネジャーを設立し、このマネジャーはいくつかの世帯を持っていて、それらの世帯に対してどういう勧誘をすればよいかを判断している。カスタマーベースのマーケティングが大切である。大切なことはあなたのカスタマーがあなたにどのようにレスポンスしているかということである。将来的な勧誘プログラムを作ることに非常に役に立つ。
TOYOTA ダイレクト・レスポンス・マネジャー
トヨタは3Cを大切にしている。コミットメント、キャッシュの見返り、コミュニケーションの3つ。データベース・マーケティングはトップの参加とリーダーシップ、人材、コンピュータ、データへの投資、短期ではなく長期での利益拡大、そして社内外両方のコミュニケーションが大切である。
トヨタの弱点は販売時点でのフェース・トゥ・フェースのコンタクトは非常に優れているがテレマーケティングを利用したフォローアップはまったくだめ。いろいろなマーケティング要素を統合することでこの弱点を改善できる。

<分科会集中受講セッション>
・B-toBセッション
ハンターダイレクト社長
コンセプト「ハイブリット・マーケティング」を学ぶ(接触しなければ販売は成功しない)
効率よく見込み客と多頻度で接触する多角的な営業組織
縦軸にマーケティング手法(セールス、ダイレクトレスポンス広告、ダイレクトメール、テレマーケティング、販売店、特約店、ディーラー)など列記
横軸にマーケティング業務(手がかり、アプローチ、受注、アフターサービス)など列記
以上で交差したセルにクライアント規模別(大口、中口、小口)と政策を記入
たとえば、大口客先の手がかりはセールス、中口客先の手がかりはテレマーケティング、小口客先手がかりはダイレクトメールを活用するなど
目的は少ない資源でより多くの接触を実現するマーケティング手法の確立
販売の成功はより多くの接触機会に依存する
※(荒川コメント)米国IBMなど既に実行、日本IBMが視察
このコンセプトで日本IBMのハイブリット戦略図作成のコンサル実施。六本木、箱崎、四ツ橋、博多にテレマーケティングセンターを開設した。
(荒川著書『好循環経営を生み出すデータベース・マーケティング』メディア総合研究所に詳細に記述
当時西武百貨店和田社長(現リテイルミレニアム会長)に推薦文依頼
<その他セッション>。
・データベース・マーケティングとニューラル・ネットワーク・モデリング
データベース・マーケティングの利用としては、離脱者の発見、ヘビーユーザーとライトユーザーの特質の把握、顧客と非顧客の特質、離反する顧客と維持する顧客の特質の把握、つぎに購入される商品の予測、購入量の予測、クレジットリスクの予測。
※「プロファイル分析」「クラスター分析」「トレンド分析」「相関分析」などニューラル・ネットワークの利用方法
・ データベース・マーケティング入門
・ マルチ・ディメンション・カスタマー・セグメンテーション
顧客から最大の価値を得るためには顧客を理解し、顧客セグメントを定義し、望ましい顧客タイプを獲得し、顧客満足と価値を構築していくことにある。そのためには特質がわかり、行動が予測できるモデルを構築できるデータを集め、態度や行動の違いがわかる多次元モデルを定義し、セグメント顧客のライフタイムバリューを分析し、望ましい顧客ミックスを引き出す。
・ データベース・マーケティング未来を形作る10のトレンド(デービッド・ラブ)
ビジネス環境はますます厳しい。コスト削減、顧客維持、クロス組織などビジネスの新しいやり方が求められている。購入者への関りが求められているが時間もマーケット予算も限られている。伝統的チャネルは限界にきている。情報テクノロジーの発達でダイレクト・コミュニケーションが可能になってきた。これを通じてデータ収集が実現できる。副産物としてデータによってロイヤルティ・プログラムによるターゲット・マーケティングが可能になる。購入者への新しいチャンス、新しい広告メディアが生まれる。購入者と販売者のシステムの統合化が可能でより安定的な長期にわたるリレーションシップを構築できる。
※(荒川コメント)NCDMは1990年最初の参加で2回目の参加。データベース・マーケティング専門の年2回開催の専門コースと考えてよい。
※レジュメもきちんと準備される。





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