2006年10月14日〜18日 第89回DMA大会(サンフランシスコ)
この年は、はじめてフルセッション申込(同様午前8時半より日曜日午後5時半まで)。プレセッション4コースから一つを選択。本セッションは月曜午前8時半、オープニングセッションから始まり水曜日午前中で終了。<プレセッションコース(2日間12時間セッション)> (1)
ダイレクトマーケティングユニバースティ (2) データベース・マーケティング (3) サーチエンジン (4) Eメールマーケティング ダイレクトマーケティングユニバーシティ ・
イントロダクション・ダイレクトマーケター(土曜日午前中) ・ クリエイティブ戦略と戦術(土曜日午後) ・ 顧客情報とメーリングリスト(日曜日午前中) ・
テストと測定(日曜日午後) ※(荒川コメント)分厚いレジュメを配り参加者に質問をしながら講義を進める。ダイレクトマーケティングからデータベース・マーケティング、そしてクリエイティブと基礎についてしっかりと講義を展開していた。CPOなど数値の意味、計算方法、RFMセルコード(アーサー・ヒューズの等分RFM方式)、リストの重要性とリストビューローなど2日間で全体を網羅するセッションだった。 <オープニングセッション・月曜日> ・
DMA会長 John A Greco,Jr 昨年、アトランタに続き「パワー・オブ・ダイレクトマーケティング(Power of DM)」を主題に展開。3つのRの重要性をトピックスにして、スピーチのストリーを展開した。 *
Responsibility(責任);パブリックポリシー、プライバシーに対する責任 * Relevant(適切);消費者に対する適切なメッセージ、受容してもらえる情報提供 *
Result(結果);企業に結果をもたらすこと 1984年は電話帳と電話、ダイレクトメールしかなかったが、現在はweb、Eメール、TV、モバイルなど多様な顧客デリバリーツールがある。情報デリバリーに責任を持ち、プライバシー責任を遵守し、会社に結果をもたらすことが重要。 マーケティングは昔のように間接的なマスという大衆にするのではなく、顧客個人をターゲットに直接(ダイレクト)に働きかけることが可能になっている。適切に実行すれば「強力なパワー」になる(ダイレクトマーケティング・パワー)。 「われわれのゴールは消費者との信頼の橋を構築すること」と最後に述べた。 ※
(DMA会長の紹介で引き続きリチャード・ブランソン登場)会場万来の拍手 ・ヴァージングループCEO サー・リチャード・ブランソン ビジネス界の大御所、起業家、スリル探訪者そしてヴァージングループCEO ※
著書邦訳『ヴァージン』TBSブリタニカ、1998年 DMA観客が感動したブランソンの基調講演 ヴァージングループのCEOが強く主張する革新的なビジネスアプローチ ヴァージングループのCEOは、とどろきわたる拍手喝さいを受けて会場の舞台壇上に上った。 ヴァージンでは、われわれ独自のビジネス法を生み出すことを強いられてきた」と笑うのは56歳の億万長者だ。「最初の3年間、われわれは商標名を使うことを許可されなかった。英国政府がヴァージン"Virgin"を無礼なものとみなしたからだ。そこで私は数多くの手紙を書いてヴァージンとは無礼と正反対のものであると説明しなければならなかった。」 1984年、私は英国のヴァージン諸島で休暇を過ごしていた。プエルトリコに戻る便がキャンセルになった時だった。私は電話をかけてプエルトリコまでの飛行機をチャーターした。空港ではたくさんの人がキャンセル便によって苛立っているのがわかったので、チャーター便の費用2000ドルをその人数で割った。私は空港の黒板に"プエルトリコまで39ドル―ヴァージン航空"と書いた。それは航空業界への進出にしてはかなり不運なスタートだった。」ヴァージン諸島での経験によって、彼自身が航空ビジネスを始めることを確信したとき、長髪でロックレコードを売る会社役員が航空ビジネスの何がわかるのだと、アトランティック航空サイドの金融専門家や出版物はしばらくの間、彼を大声であざ笑った。伝統ある航空会社が赤字を抱えていた当時、彼に成功できると思わせたものはなんだったのだろうか。「ヴァージンアトランティック航空に素晴らしい顧客サービスの価値を持ち込めば、厳しいビジネス環境の中にあっても、大いに成功を収めることができると思った。われわれは正しかった。たった1機の航空機で始め、ヴァージンアトランティック航空はニューヨーク英国間を運行する航空機の中で好んで選ばれる存在となった。」それ以来、ヴァージンアトランティック航空は世界中にサービスを広げ、ブランソンを伝説的人物にした、機内でのマッサージや生演奏、グルメ向きの食事といった"独創的な"ビジネス革新行い、呼び物にしている。 1997年、ブランソンは時代遅れの英国旅客鉄道システム、とくにロンドンからマンチェスターに向かう人気の路線を改善しようと試みた。列車は旧式で、線路は修理が必要なほど深刻な状況であり、サービスは貧相なものだった。政府関係者や鉄道会社の役員の反対にあっても、ブランソンは典型的な因習であるとして改善を推し進めた。「われわれは世界で最も燃費のいい、環境に優しい列車を造った。」「そしてこの列車は時速140マイルのスピードで走る。以来、英国政府は国内の鉄道システムを大きく改善し続けている。製品の改善をさせることは競争を意味するが、誰かが現れて、何かを良くしよう、効率的にしようとすれば、その業界の人間は気を引き締めようとする傾向にある。」 ヴァージングループCEOとして再生可能なエネルギー資源発見のために30億円の寄付を公約したことを受け、ブランソンは聴衆に対し、世界をよくするためダイレクトマーケティングの活動を通して生みだされた財産を利用するよう、熱心に勧めた。「巨大な財産に伴って巨大な責任が付いてくる」と彼は述べ、「ただ単に最も大きなヨットを買うような他の裕福な人々と張り合うためだけでなく、財産は前向きに使われなければならない。ビジネスリーダーには人間としての責任もあるが、しばしばこのことが無視される。」 世界を視野に入れた企業とビジネスリーダーたちは、恵まれない人々や公民権のない人たちに新たな機会を作り出す社会的責任を負っている、とブランソンは語る。確かにそれらの投資は利益にかなり食い込むかもしれないが、対する報酬は莫大なものになる。「あなた従業員が会社を心地いいと感じていれば、あなたは彼らを大事に思っていて、そのことで勤労意欲が向上する。そしてその結果会社の利益が上がることになるのだ。」※(DMA大会事務局翌日配布されるニュースより翻訳)
<ゼネラルセッション・17日> ・ クラフトフード社 ポーラ・A・スニード エグゼクティブ・ヴァイス・プレジデント、グローバルマーケティング・エグゼクティブ・リソーシズ&イニシアチブ マーケティング界のベテラン、ポーラ・A・スニードは、消費者に対する洞察や消費者戦略、メディア、広告、CRM、ブランド・デザイン、消費者向けプロモーション、マーケティング協業、など、100以上ものブランドを抱えるクラフト社のマーケティング試算機能の世界レベル責任者であり管理者である。 感動のスピーチだった。 スピーチの主題はクラフト社がダイレクトに商品を販売する理由と方法について。 理由は小売業が一般的な商品に棚を空けるが新たなワンランク上の商品には棚を空けてもらえないのでダイレクトに販売している。 方法は『food
& family』(64ページ)という雑誌をダイレクトに会員に届ける。コンセプトは「インタラクティブキッチン」。(Kraftfoods.com/free) 学生にEasyMAC、プリミアム(high−value)"GEVALIA"、コーヒーマシン"ASSIMO" TVコマーシャルを紹介しながらスピーチ。 We
have great idea. We can show. Turn simple to the day. 適切な内容を、適切な場所に、タイミングよく届ける。ユーザーは350万人。 以下のことを学んだ。 *
カスタマーインサイトがすべて(インサイト:洞察) * 権利の浪費をしないこと、そして縦割(サイロ)組織を破壊すること * 派手なテクノロジーには警戒する。タイミングとパーミッションが重要 *
リレーションシップは商品で可能 * 確信を持つこと、しかし勤勉であること 最後に、「新たなパートナーシップを作ること」「顧客洞察を発見するのにもっとお金を使いなさい」「マスマーケティングとダイレクトマーケティングの境界もっと推し進めること」と言うような言葉で締めくくった。 ※(参考情報)クラフトフーズは、1995年、「シンプル・アンサーズ」という14ページの雑誌を発刊した。雑誌はクラフトフーズのブランド商品とレシピを紹介する内容。表紙はパーソナル化され、宛先人名前と「クラフト・シンプル・アンサーズ初刊号へようこそ」と印刷される。雑誌はコロラド州デンバーで行なったテストプログラムのフォローアップだった。デンバーで行なわれたテストは60秒のTVコマーシャルを導入し、電話をかけると夕食のレシピがもらえるフリーダイヤルを放映(DRTV)。雑誌は家族のメンバーがキャストとして登場し、全面にわたり個人レベルの対応がされている。顧客は自分のレシピを誌上で紹介することもできる。その応募のための返信カードが付いている。レシピが誌上に紹介されると25ドル貰うことができる。雑誌にはクーポンも付いている。「多忙な毎日によい食品を」がテーマとなっている。
<プレセッション> ・ダイレクト・マーケティング・ユニバーシティ スピーカー:ボブ・ヘミングス(Bob
Hemmings)、ヘミングス IV ダイレクト社長 ※2日間にわたる一人の講師によるセッション。プレセッションは初めての申込。 パート1:10月14日
10:00〜12:30 「顧客を掴み、定着させる導入、オファー、セールスプロダクション」 読者にマッチしたオファーを使ってどのように読者の関心を惹きつけ、掴み、維持するか、無気力さや混乱を打ち破り読者を行動に駆り立てるオファーについて講義。 パート2:10月14日14:00〜16:30
「クリエイティブ; ダイレクトは説得力ある販売手法」 約束を始めるところからクロージングの際の仕掛けまでどのように読者の関心を惹きつけ、保つかに焦点をあてる。どのような言葉を使って迅速な、力強い短いセールスコピーを打つか講義。 パート3:10月15日
9:00〜11:30 「顧客情報とメーリング・リスト」顧客情報の分析手法(RFMセルコード研修)、リストの重要性とリストの種類 メディアと読者がますます分裂する状況が、ダイレクト・マーケティング、データベース・マーケティング、ワン・トゥ・ワンマーケティングにマーケターを駆り立てている。ダイレクトマーケティング、データベース・マーケティングの基本理論いついて講義。 パート4:10月15日
13:00〜15:30 「テストと測定実験」ダイレクトレスポンスマーケティングの秘密武器 1回ごと1つの重要な変数について分析すること。コントロール方法を確立すること。統計的に実証可能なサイズのセルやパネルを使うこと。正確なサンプルを引き出すこと。ビジネス成功の秘密は、有意義なデータの分析能力にかかっているとしテストと測定について事例を挙げて講義。 ※その他プレセッション;サーチエンジン、データベース・マーケティング、Eメールマーケティング (分科会セッション) <分科会2006年のコース> (1)ダイレクトマーケティング、(2)クリエイティブ・ストラテジー、(3)アクジション&ロイヤルティマーケティング、(4)インタラクティブマーケティング、(5)分析/リサーチ、(6)ストラテジー&トレンド、(7)プロダクション、(8)ブランド&ダイレクト、(9)リスト/データベース <分科会セッション> ※受講したセッションより
・「ロイヤルティのリーダー達がすべてを語る。現場の最前線から学んだ教訓」 リック・ファーガソン(コロキー)、ナンシー・ゴードン(Director of
Loyalty, CompUSA)、リック・ラスムッセン(Director, Loyalty Marketing, Alaska Airlines;アラスカ航空)、ティファニー・トゥエル(
Global Customer Loyalty, Manager, Hewlett-Packard ) 各社が行なっているロイヤルティプログラムのパネルディスカッション ・「オプト・イン・マーケティングの突破口、マイクロソフトのオプト・イン率が全世界で40%以上アップした戦略を学ぶ」 1週間に雑誌とプリント広告1週間、24時間前に1回目のEメール、24時間から72時間以内にアウトバウンド電話、最後に2回目のEメール 電話はNO;76%(イタリアではメールは禁止)。 顧客の声に耳を傾けることは極めて重要(クリティカル);Voice
of Customer(VOC) がキーワード(2600時間以上のインタビューから学んだ) ※マイクロソフトは顧客の声(メール)を分析、承諾を得て、個別にメールにより情報を提供。ワン・トゥ・ワン・マーケティングで成功している。 ・
「顧客ライフサイクルへのマーケティング」 見込み客から購入客になったら顧客をサイクルでアプローチする。顧客に約束ごとを明記し、販売をし、顧客の変化に注目し、つぎの約束を伝え、リピート販売を実現する。そのためには{ヒストリー・マーケティング}が重要。 メッセージやタイミングをカスタマイズするためにプロダクト・ライフ・サイクルを使う方法もレスポンス率を増やすことが可能。 5つの必須条件 1.
VOC(自分の会社、競合他社の会社、直面している問題、意志決定者、購買の障害) 2. 継続的なマーケティング戦略(顧客価値・ベストカスタマーにフォーカス) 3.
統合マーケティング(メディアをシンクロナイズする) 4. カスタマーケア 5. 長期収益性に焦点(LTV) ・「USPからESPへ -エモーショナル・セールス・マーケティング戦略を通じてライフタイム・バリューを獲得する」 USP(ユニーク・セールス・プロモーション)からESP(エモーショナル・セールス・プロモーション)へ切り替える。 エモーショナル(顧客の感情)を中心にプロモーションすることが今後の1つのマーケティング手法。イベントとは何か。恐怖や当惑からの回避、満足、安全やくつろぎ、興奮、幸福や喜び、プライド ・「イベントベースのマーケティング」 イベントベース・マーケティングのデータベースを作ればすべてのデータをデータベースにロードし、保管管理する必要がなく、情報投資も少なくて済む。イベントベースキャンペーンは通常の4倍から12倍の販売成果になる。 イベント計画を作り、イベントをパターン化し、アクション計画を作る。 たとえば、プライベートブランドイベント、ロイヤルカスタマーイベント、低価格顧客などビジネスサンプルを準備する。 ・「ダイレクトキャンペーンで小売業の立地を理解する」 3種類の購買客 1)
ダイレクトマーケティング購買客 2) 店舗購入購買客 3) 両方を利用する購買客 ダイレクトマーケティングを利用する顧客と店で購入する顧客のインパクトを調べる。セグメントにより影響度が変わる。店での購入を増やすと購入額が増える。 ダイレクトチャネルの利用は店への距離が近いほど高くなる。 距離;0−5分 65%がダイレクト利用 5−10分 50%がダイレクトチャネル利用 10−15分 40%が利用 ※ (荒川コメント)店からの距離と購買額を分析してみるとロイヤルカスタマーは距離が近い。距離別の顧客セグメントが重要。 ・「ブランド経験を通じて最適な顧客経験を伝達する」 コモデティ(日常)から商品(パッケージ)、つぎにサービス、サービスから経験(スターバック)、つぎの顧客価値は何か(ネクストガイド) トランスフォーメーション(変換・転換)がネクスト・ステージ 新たな経験をプロモーションする ・「小規模予算かつ高価値セグメントでマーケティングする」 プッシュマーケティング(侵入マーケティング)は限界。顧客価値がリレーションシップ・マーケティングを実現する。コミュニティの声(VOICE)に耳を傾け、webマーケティング・プログラムは特別なコミュニティに奉仕するようにする。顧客との強いリレーションシップ構築が小規模の目指すマーケティングといえる。
※ 2006年、印象に残った言葉は「VOC」「Transformation」「Mobil Marketing」の3つ。 VOCは顧客の声に耳を傾けること。インサイドアウト(企業内部)ではなくアウトサイドイン(外部情報の内部化)が今後のマーケティングに重要。ドン・シュルツの統合マーケティングで早くから主張されている。 ※ トランスファーは移転、変換の意味。顧客をこの場所から他の場所へ移転する。この概念から今後CRM(顧客関係マネジメント)と言う抽象的な用語ではなく、現場がどのようにアクションをすればよいか理解できるように"CTM"としたい。顧客を"ストレス""不幸"から"癒し""幸せ"にトランスファーするメッセージを発信できるかどうかが生き残りの戦略になる。
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