米国DMA&企業視察17年のヒストリーP

2007年10月13日〜17日 第90回DMA大会(シカゴ)


出席する予定だったが、仕事の関係で残念ながら参加できなかった。DMAのサイトで掲載されたハイライトや会場で配られる『SHOW DAILY』から記載した。

土曜日から日曜日2日間通しのプレセッション
昨年は5コースのプレセッションであったが今年は8つのプレセッションが実施された。Ruth P. Stevensのダイレクトマーケティングユニバースティ、友人であるArthur Middleton Hughesのデータベース・マーケティングは昨年同様に行なわれた。

オープニングセッション 10月15日(月曜日)
・ DMA President & CEO John A Greco, Jr. プレゼンテーション
ダイレクトマーケティングはパワフルなソース。米国のGDPの10%以上を占め、全米広告費用の50%以上がダイレクトマーケティング費用であると例年と同じように経済に与えるインパクトについて語った。「人々はメッセージを求めている」「DMAメンバーは強い倫理的責任感を持ってビジネスに当る必要がある」と語った。

・Kenneth Cole Productions のKenneth Cole会長兼最高経営責任者(CEO)のスピーチ
ケネス・コール・プロダクションは、1982年に創立されたファッションハウス。トレイラーで靴を販売したことからスタートし、現在、全米に155店舗を有する1800億円のビジネスを行なっている。彼は社会活動家でもあり、1985年、エイズリサーチのための組織を創立(amfAR)。ニューオリンズを襲ったハリケーンカトリーナの被害に資金援助したり、ホームレスに衣服や靴を値引きする販売プログラムを提供している。
ビジネスはもちろんだが社会的意識をいかに育てていくかが靴販売の物語であると語った。ベストな解決方法は金をかけることではなくクリエイティブと工夫を心がけること。ファッションはつつましい(控えめな)ビジネスであり、毎日、改善を重ねている。ビジネスをはじめて25年の間にビジネス環境もカルチャーも劇的に変化したがファッションはつつましいビジネスであることは変っていない。
消費者は今日つま先が丸い靴を好んで買うとつぎに先のとがった靴を買う。いつも社会的な責任にもがいていると語り、消費者の魂を認識することが大切であり、商品を選択できる能力を消費者に提供すること、またファッション・インパクトに影響力のある重大な問題に気を配ることが大切であると語った。

ゼネラルセッション 10月16日(火曜日)
・ Ogilvy & Mather Worldwide 会長兼最高責任者(CEO) Shelly Lazarus
FORTUNE "50 Most Powerful Women"の一人である彼女が、ダイレクトマーケティングが直面する変化について講演した。50人のパワフルな女性経営者のトップは、ペプシコ会長兼最高経営責任者インドラ・ノーイ、2位はゼロックスのアン・マルケイヒー会長兼CEO、3位はイーベイCEO兼社長のメグ・ホイットマン。アドレスは下記。
http://money.cnn.com/magazines/fortune/

ラザラス氏は新しいメディアが巨大なポテンシャルを持っていることを示すために、消費財メーカーユニリーバのためにオグリヴィが制作したDove "Real Beauty"を紹介した。下記アドレスにアクセスすればこのキャンペーンを見ることが出来る。
http://www.campaignforrealbeauty.com/
このキャンペーンは米国、アラビア、アルゼンチン、オーストラリア、ベルギー、フランスなど36カ国(日本はなし)で実施されている。
彼女は「マーケターにとって今は輝かしい時代である」「未来はわからないが未来を作るために今は楽しい」「今が私たちに時代である」と語った。

ゼネラルセッション 10月17日(水曜日)
・ Wikia Inc. 創業者で社長 Jimmy "Jimbo" Wales
「Wikiaワールドを通してマーケターを導く」として講演。
Wikiaは人類が残した知識、ニュース、言葉の解説をフリーで提供しているサイト。サーチエンジンに挑戦。世界66ヶ国語で提供している。調べるのに非常に便利だ。
サーチエンジン"グーグル"で"Dove Real Beauty" "Cadillac Cimarron" "Cola Real thing"など文字を入力すると、検索情報が表示される。そこに下記のアドレスで情報を提供してくれる。インターネット百科事典である。
http://en.wikipedia.org/wiki/

セッション(2007年分科会)  10月15日(月)〜17日(水)
下記の9コース
(1) 1:1 Marketing BOOT CAMP        7講義
(2) Acquisition and Prospect Marketing    7講義
(3) Creative Strategies and Execution     20講義
(4) Database Management and Analytics Integration 35講義
(5) Emerging Channels   14講義
(6) Online Marketing / Interactive Media  21講義
(7) Retention and Loyalty Marketing   7講義
(8) Strategic Multichannel Integration  14講義
(9) Variable Data Production  7講義
合計132講義(セッション)が行なわれた。
「USPからESPへ:―エモーショナル・マーケティング戦略を通じてライフタイム・バリューを獲得する」「イベントベースのマーケティング」「データベース・マーケティング9つの過ち」は昨年度とレジュメもまったく同じ(2006年報告を参照)。
以下、各セッションから主なものをピックアップした。

・ Shopping Cycle Model & Its Applications
「ショッピングサイクルとは何か」「なぜショッピングサイクルなのか」から始まり、過去のサイクルではなく、購買データから顧客ごとにショッピングサイクルを予測する重要性を述べている。
10段階でアベレージ消費ランク、実際のショッピングサイクル、予測ショッピングサイクルなどの統計を用いて分析。ベストなサイクルとそれに続くグループと2ステージに分けることを推奨している。ショッピングサイクルが分かれば顧客へのアプローチが適切に実現できる。

・ Sharing the Wealth -An Inclusive Cross-sell Modeling Solutions
大リーグベースボール、7回に観客が一斉に立ち上がって"Take me out to the ball game"を歌う。そして"Buy me some peanuts and Cracker Jack"と続く。これを取り上げてピーナッツをより以上に販売するためにどの場所で売り回ればよいか球場の絵を用いて提案。
ホットな顧客とコールド(冷たい)顧客と分けることの重要性を説明。コンタクト戦略はホットな顧客に向けて行なうこと。そうすればクロスセルがより実現する。顧客への到達率が従来の30%以上高まると説明。

・ CRM:the Silent Revolution in CPG
コンシューマー・パッケージ・グッズ(CPG)メーカーにとって静かな革命が起きているとしたセッション。ニールセンとexperianスタッフのスピーチ。
「Know」からスタート、「Target」に、つぎに「Engage」、最期に「Measure」というConsumer Connection Cycleを用いて方法論を提示。
Knowは顧客洞察(インサイト)。デモグラフィック(年齢・性別・住居・所得・職業など顧客属性)、生活イベント(コト)、購買行動、態度で顧客を観察し思考する。そしてターゲットを決める。「誰が」「なぜ」「どのように」「なにを」を購買データから情報を得てターゲットを明確にする。エンゲージはメッセージやチャネル、メッセージを作りキーワード、オファーなど。この適切な実施でロイヤルティが12%アップ、クロスセルが15%アップ、プロフィットは10%アップした。測定の結果、1世帯当り2.95ドルの価値アップになった。この価値に世帯数を乗算すると価値の総額が計算できる。
顧客セグメントは顧客価値ごとにABCに分け、さらにそれぞれをヘルシーモチベート、コンビニエンスモチベート、ファミリーモチベートと区分していく。

・ Running Red Lights:The Keys To Creating Dazzling, High Performance Direct Mail
21世紀、ハイパフォーマンスなダイレクトメールを実現するキーポイントについて事例をあげてスピーチ。
1日当り顧客が受け取るメッセージは5000と言われる。メッセージの爆発、洪水である。ほとんど消費者のマインド(頭の中)に届くことはない。このような状況下で顧客のマインドに位置を占めるにはどうすればよいか。「赤信号を走って渡る」。そんなことは出来ないがそれほどのことをしなくてはならない。
ブランド体験をさせること。体験を極める要素は、予算(金)、アイデア、コピー、ビジュアル、デザイン、スペースや頻度など不動産(リアルエステート)、タイポグラッフィをあげている。その一対一つの要素のあり方について解説した。ビジュアルは、写真のストックをより多く持つよう助言した。

・ Building Your Retention and Profitability Roadmap
戦略とキャンペーンをデザインする方法について。始まりは顧客の洞察(インサイト)から。そしてターゲット、そのつぎコンタクト(接触)戦略、最後が顧客の評価。評価はライフタイム・バリューで行なう。
つぎのような4次元の提示が面白い。
Y軸にカレントバリュー(現在価値)、X軸にポテンシャルバリュー。このXY軸で4つの領域に分けることができる。右上がベスト顧客、右下が成長可能性顧客、左上が平均顧客、左下が沈滞顧客。それぞれの顧客について洞察し、リテンション戦略を組み立てる。

・ Database Marketing:Building Database Performing Analytics and Creating Contact Strategies
2時間15分、54ページのレジュメによってデータベース・マーケティングのすべてを講演。マーケティングは大きくマスマーケティングとパーソナライズドマーケティングの2種類に分かれる。
パーソナライズドマーケティングは、CRM、ダイレクトマーケティング、データベース・マーケティング、ワン・トゥ・ワン・マーケティング、ダイアログ・マーケティング、テクノロジー・マーケティング、パーミッション・マーケティング、ターゲテッド・マーケティングなどさまざまな言葉で表現されている。
CRMは顧客とのリレーションの管理をするソフトウエアシステム体系、ダイレクトマーケティングは顧客に直接メッセージするマーケティング(データベースがあるかいなかは問わない)、データベース・マーケティングは顧客をターゲットし、顧客ニーズや顧客バリューによって区分し、区分ごとに商品やサービスをカスタマイズし、リレーションシップを育て、セグメント別に接触戦略を組み立てること。
以上の定義から開始して、データベース・マーケティングについて下記項目に分けて解説。レジュメからデータベース・マーケティングの総括セッションであるといえる。
・ マーケティング・データベースの構築 準備するデータ種類や収集方法
・ レポーティングと分析 OLAP、RFMセル
・ データマイニング クラスタリング、セグメンテーションなど統計手法
・ コンタクトストラテジーとリレーションシップ
                             DMA07 レジュメにリンクします
                                 (290MB)

 

                   


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