1999年10月21日〜29日 第82回DMA大会(トロント)
<オープニングセッション> ・
DMA会長 H.Robert Wientzen 毎回定例のように1年間のダイレクトマーケティング経済の成長を語る。 今年過去1年のダイレクトマーケティング市場;1兆5000ドル 今後5年間で2.2兆ドルまで発展すると予測 <ゼネラルセッション> ・トム・ピータース講演 ベストセラー『エクセレント・カンパニー』から20年近く経った今も1年間に75回のセミナーをこなすトム・ピータースはステージ狭しと動き回り、時に熱く、時に静かに聴衆に訴えかけた。「ホワイト・カラー革命の進行を自覚せよ」―彼が終始一貫して唱え続けたメッセージである。「マイクロソフトの株価>GM+フォード+ボーイング+シアーズ+セイフウェイの株価という現実、シリコンバレーでは平均毎日64人のネット億万長者が誕生しているという現実を認識せよ。そこにはもはや企業規模の優位性や既存の組織/意思決定体系存続だけでは今後生き残れない世界が到来していることを示唆している。このホワイト・カラー革命に生き残るには自分個人のブランド化(Brand
You)が必要である。知識、能力面で他人との差別化を図り、ブランドの知名度をネットワークで広く知らしめていくこと。」「Reward Excellent Failures,
Punish Mediocre Successes(素晴らしい失敗には報酬を、月並みな成功には罰則を)がこれからのビジネスで心がけるべきこと」という言葉が印象的であった。 *『ブランド人になれ!』『セクシープロジェクトで差をつけろ!』『知能犯のプロになれ!』 * あまりにも神がかり的になりつつあり、指導者として敬遠する傾向があるとのこと。 ・フェデリック・F・ライクヘルド講演 『ロイヤルティ・エフェクト』著者 顧客利益コンポーネントを提案(有名な図表)。顧客維持により基礎利益におなじみ利益が加算され、販売費用節約効果のための利益が創出され、さらにロイヤルティが高まることにより口コミで他の顧客を呼び込み、そこから利益が上がり、顧客維持マーケティング戦略は価格安定効果利益を生み出す。 (ライクヘルドの主張) ※
顧客維持率を5%上げるだけで利益率をほとんど100%向上させることができる。 ※ 利益をもたらす顧客を一人でも残さず維持する"無離脱運動"に全社的努力を傾注する。 ※
企業が離脱顧客一人当りの損失額を知れば、顧客維持に必要な投資を正確に評価することができる。 ※ クレジットカード会社が顧客離脱率を20%から10%下げれば平均顧客定着年数は5年から10年に延び、顧客価値は134ドルから300ドルと2倍になる ※
自動車関連企業の一人当り顧客価値は初年度25ドル、2年目35ドル、3年目70ドル、4年目88ドルと徐々に上がる。 *クレジット会社MBNAの調査報告(ハーバード・ビジネス・レビュー「サービス産業のZD運動」1990年9−10月号掲載) *「ロイヤルティとは?」から話が始まった。一番ロイヤルティの高いのは「ワンちゃん」であるとジョークからスピーチが始まった。ワンちゃんはとにかく忠実である。 *ロイヤルティ・マーケティングは成熟、複合競争時代では確立すべき重要なマーケティング戦略である。日本ではこの考え方は極めて希薄である。いまだに不特定多数に対するマスマーケティングが主流だ。 ・ジェイ・ウォーカー講演 プライスライン・ドット・コム創業者 航空チケットなど旅行関連サービスのディスカウンターで一世を風靡する(現在、閉鎖) まさにデジタルブーム、インターネットブームの真っ只中。風雲児のごとく壇上に現れ、拍手喝采。ディスカウントチケットで多いに稼いだ。 ・セス・ゴーディン講演 当時ヤフー副社長『パーミッション・マーケティング』著者 「Success
Online is A 10-letter Word」のタイトルでセス・ゴーディン氏はパーミッション・マーケティングの重要性を主張した。「今の消費者はスーパーで買い物する際、家ではTVやチラシから、そして店ではPOPやビデオから様々な特売情報に接する。その情報件数は1回買い物あたり約2万件といわれている。もはや消費者は情報に飢えてはいない。むしろうんざりしている。この有象無象の情報群から消費者を救い、彼らに本当に必要としている情報だけを提供して収益をあげていくというのがパーミッション・マーケティングのアプローチである。」 パーミッション・マーケティング、つまり消費者の承諾を得てから情報やサービスを提供していくというマーケティングのスタンスはつぎのように説明された。 @
パーミッションは1日にして成らず A パーミッションは取り消し可能なものである。 B パーミッションは偶然始まるものではない。 C パーミッションは育てていくものである D
パーミッションはわがままなものである 「顧客獲得は投資と考えるべきである。顧客との関係はデートのようなもので、決して相手を驚かせて、嫌がることをしてはいけない。時間をかけて相手の好みや関心を聞き出し、それにふさわしい情報、オファーを発信し、徐々に顧客と親密になるステップをとらなければならない。」 「テクノロジーの進化で顧客一人ひとりに対する異なった情報を同時に発信する際にかかるコストは郵便・電話などのメディアに比べ格段に低くなった。顧客に対するオファーの効果検証もマーケティング・オートメーションソフトの導入により立案→実験導入→測定→改善→再導入のリードタイムが短縮され、パーミッションに基づくウェブ・マーケティングの世界こそがまさに自分達のおじいさんが買物していた頃のワン・トゥ・ワンの世界を再実現する」と強調した。 (パーミッション・マーケティング概念) *インターラプションマーケターの場合 身なりを整え、データベースとマーケティング戦略を活用 独身者バーで誰かれ構わずプロポーズ 失敗すればスーツと靴のせいにする *パーミッションマーケターの場合 デートに出かける 10〜12回のデートまで、相手のニーズや要望のコミュニケーションを図る 20回目以降に家族を紹介 3〜4ヶ月後にプロポーズ *デートのための5つのステップ 1)
見込み客に志願してもらうインセンティブを提供する。 娯楽/宝くじ/無条件支払いなど、インセンティブは公然、明白に分配 2) 見込み客から得た注目を利用して、長期的なカリキュラムを顧客に提供し、商品やサービスについて 説明する。商品収益にフォーカスする 3)
見込み客がパーミッションを継続することを保証するためにインセンティブを強化する。 双方向対話で見込み客毎に提供するインセンティブを整える。 4)
顧客からもっとパーミッションを得るために追加のインセンティブを提供する。消費者の個人的な生活、趣味、関心事などのデータ収集。新しい商品カテゴリーを提供。商品サンプルを提供。 5)
時間をかけて、顧客行動を収益に転換するためにパーミッションを活用する。 ※ (荒川コメント)パーミッション(承諾)はデータベース・マーケティングを推進する上で絶対に遵守すべき事項。デジタル化したEメールや携帯電話などの接触ツール流行の現在は特に重要。まずは顧客の承諾を得てメッセージすることが当然であり、顧客に対する責任でもある。
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