米国DMA&企業視察17年のヒストリー I
1998年10月11日〜14日 第81回DMA大会(サンフランシスコ)


<ゼネラルセッション>
・ ピーター・ウヴェロッスの講演 
2000年以降、ウォーキングしてみる。
誰も予測できない変化の時代。予測は困難。誰が8年前、ソ連邦が崩壊すると予測できたであろう。ベルリンの壁がいとも簡単に崩壊するなど誰が予測できたであろう。チェンジ、変化が当たり前の時代である。変化にどうつきあっていくかが企業経営に問われている。
*家庭の変化 7年前、専業主婦は70%であった。現在7%でしかない。主婦が仕事に出ることで家族のあり方が劇的に変化してきている。子供が2人という理想は過去のもの。家族での役割分担は昔とすっかり変わってきている。
*教育の変化 文字の読めない人々が劇的に増加している。米国は移民を受け入れているからである。ロスでは市が昼間子供たちに文字を教える教育を始めている。その施設を利用して夜間にはその親たちに文字の読み書きを教えている。
*都市の変化 都市の貧民化が促進されている。ロス暴動はどうして起きたのであろう。商店を片端から破壊し、車を焼いた。貧民街の物価はハリウッドよりも高い。ワッツにはスーパーマーケットがない。ワッツに出店してくれるよう運動したがなかなかでてくれない。やっとあるスーパーが出店してくれた。店を壁で囲み、入り口をひとつ作った。入り口には二人の守衛がたっている。
このような世界を誰が予測できたであろう。
企業の組織運営が変化していくであろう。縦割り組織、ピラミッド組織は崩壊する。その組織では時代に対応できないからである。これからはチーム概念が重要になる。チームワークが大切。誰とチームを組むかが変化についていける条件になる。
・ ガリー・ハミルの講演(『コア・コンピテンス』の著者)
ロンドン大学ビジネススコールの戦略担当教授。ワールドワイドなリーダーシップに到達する。革命としての戦略。
プッシュは終焉した。古い過去のしきたりはすべて終わりを告げている。これまでの中心概念であったものはすべて通用しない時代に突入している。
業界の常識、業界の慣例、業界の通念というものはまったく通用しなくなる。業界に詳しいコンサルタントなど役に立たなくなる。業界の知識は変化の激しい時代に何の役に立つのか。
生き残りをかけて大手企業の合併が行われているがジュラシックパークの恐竜がセックスしているようなものだ。従来の経営概念から脱皮できない企業は優秀な人材を失っている。彼らはシリコンバレーに行く。シリコンバレーは従来組織の圧力から逃避した人々の避難場所である。「My Time My Place」の時代にはいる。個人化が進む。これからの経営はパッションが重要。情熱・熱意が企業経営の存続を決める。改善ではなく改革、革新が問われる。改革ができない企業は存続できない。それと新しい認識の確立が重要になる。
・ ニコラス・ネグロモンテの講演(『デジタル・ビーイング』の著者)
E-Commerceの発展ですべてがダイレクトになる。脱仲介業者の時代が到来する。
E-Commerceの規模は2000年3270億ドル(約40兆円)と統計がでているがそのような統計はどこからでてきているのか。私の予想は1兆億ドル(1200兆円)になると思う。
テレコミュニケーションとコンピュータのコストが低減していくからである。コストが下がれば利用者が増える。
*小売業  良い将来はない。店舗は待ち合わせや経験の場所になる。実際の買い物はネットで行う。たとえば、本屋で本を買うということはなくなる。
*経済モデル  固定価格という概念は消滅する。ボクシングは12ラウンドに対して金を払っているが1ラウンドでノックアウトになれば損した気分になる。1ラウンドごとに金を払うような経済モデルに変化していく。変動価格が当り前になる。毎日新しい経済モデルを探求するような時代になる。
*トランスポート  食品をカートに積んでお金を払って運んでくるということは変化する。食品の納品はドアレベルに変化する。何時に運んでほしいと頼んでおけばその時刻に配達される。すでにフェデックスが行っていることだ。メールボックスに冷凍ボックスが登場してくる。コンピュータだってビットで運ばれる時代がくる。MITではそのような研究をしている。
・ドン・タプスコットの講演(『デジタル・エコノミー』の著者)
ニュー・パラダイム・ラーニング・コーポレーションの代表。
今後どのように成長していくか、どのような速さで成長していくか。マーケットに対するインパクトを考えてみる。思い違いしてならないことがある。テクノロジーが発展してテクノロジーの革命が起きるのではない。人口統計学的な変化が革命を起こす。テレビ時代のベビーブーマーが主役の時代からベビーブーマーの子供たち、デジタル時代の子供たちの世界になる。ベビーブーマーの子供たちは8000万人いる。彼らの家庭の30%がコンピュータを持っている。ビット人間たちだ。
彼らの興味はコンピュータとパーティ、そしてデートである。エコー世帯と呼ばれる。ジェネレーションギャップではなくジェネレーションラップ時代だ。子供が権威を持って親を教育するような時代になる。インタラクティブは当たり前。彼らにとってインタラクティブは酸素のようなものだ。インタラクティブが習慣になる。カタログはデジタルになる。ブランドはイメージから関係に変化する。誰を信頼できるかがブランドになる。ネットが私に何をしてくれるかどうかでブランドが形成されるようになる。チョコレートクッキーを注文するのにナッツはいらない、甘さは控えめなど、個人的な要求に応えられなくてはならない。ボルボは安全な車というイメージは個人にとって関係がない。ある人にとってボルボはかっこいい車であるかもしれない。個人一人ひとりが勝手にイメージする。
広告代理店は今までどの媒体を選ぶかを決定したらあとは運に任せるしかなかった。これからはネット広告になる。誰がクリックしたかで数秒広告できる。広告とマーケティングが融合される時代になる。私が今したいことはパーソナル化したエージェントを創立することである。現在の旅行代理店のような存在は消滅する。

<分科会セッション>
以下の12コース
1.カスタマー・リレーションシップ・マネジメント(CRM・15セッション)、2.Eコマース(18セッション)、3.マーケティング・インテリジェンス(14セッション)、4.クリエイティブ&プロダクション(12セッション)、5.ブランド&インテーグレーテッドマーケティング(13セッション)、6.メディアチャネル&チョイス(11セッション)、7.データベースツール&テクノロジー(13セッション)、8.マネジメントチャレンジ(9セッション)、9.コア・コンペテンシー(7セッション)、10.インシュランス&ファイナンシャルサービスマーケティング(6セッション)、11.グローバルマーケティング(8セッション)、12.ハイテック・マーケティング(7セッション)
※CRM登場、Eコマース登場など時代の変化をうけてセッション内容も大きく変化した年。まさにデジタルブーム全盛期。





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