米国DMA&企業視察17年のヒストリー J Part2
1999年10月21日〜29日 第82回DMA大会(トロント)


デビット・シーゲル講演 
『Creating Killer Websites』の著者
「皆さんの中にロレックスの時計をお持ちの方はいらっしゃいませんか?」―ベストセラー 『Creating Killer Websites』の著者、 デビッド・シーゲルのランチョン・プレゼンテーション「Strategies for Online Success」(オンライン上で成功するための戦略)は聴衆に対するこのような問いかけで始まった。300人程の中からロレックスをはめていたのはただ一人(ダイレクト・マーケターは意外にノン・ブランド志向なのか?)、40代半ばの紳士だった。
「ちょっとお借りしますよ。」とゴールドのロレックスを手に再び演壇に戻ったシーゲル氏。「ロレックスが既存のビジネスモデル、そして(ビニール袋を取り出し、時計をその中に入れながら)このビニール袋がいま現在のディストリビューション・システムだと思ってください。」「そして(と、おもむろに取り出したのは巨大なハンマー)、これがインターネットです。いま、起こりつつある現象はつまりこういうことです。」と言うなりハンマーをステージ床に置かれたビニール袋のロレックスめがけ振り下ろす。ハンマーで20回以上打ちのめされたロレックスはもはや粉々、ただの屑となり会場からは驚きの声と大きなため息が漏れた。時計の持ち主はぼう然と成り行きを見つめていた。この様なパフォーマンスの後、テーマはウェブ・マーケティングを成功させるサイトの話に移った。
ウェブ・マーケターが陥りやすい6つのワナ。それは、
@ メディアとして極めて重要だと考えていない。⇒(ウェブは企業戦略そのものである)
A 誰にもサービスを提供しようと考える。⇒(ウェブの強みはターゲット・マーケティングである)
B テクノロジーに走りすぎる。⇒(顧客が見たいのはウェブ作成に使われた技術ではない)
C サイトを商品カタログと同じ様に作る。
D 内向的なサイトを作ってしまう。⇒(顧客とコミュニケーションする目的ではまったく作られていない)
E ウェブ・マーケティング上でのミスを深刻にとらえない。⇒(ある証券会社はオンライン取引での誤操作による取引ミスは全取引の2%で、極めて低いと発表しているが、この様な態度こそが一番問題である)
また、ウェブ・マーケティングの成功が企業カルチャーとも密接に関わっていることを指摘。「ウェブ・マーケティングのコンサルティングを依頼する会社に実際に行ってみると、パソコンは各部署に2台、社長はインターネットをまったく利用していないという信じられない現実がある。そういう企業はまず、経営陣の啓蒙から始める必要があると、コンサルティングは断りましたが(笑)。」とシーゲル氏。「トップには1日30分のネットサーフィンとEメールが来たら24時間以内に返答することから始めるように薦めている。」との具体的アドバイスに、米国でさえも情報リテラシーの格差が企業間、企業内に大きく存在することを改めて感じた。

・ ジェリー・シュレシャウスキ氏のセッション
「Leveraging your direct marketing skills」(ダイレクトマーケティングのスキルを活用するには)のタイトルの裏に「ネット上で」という言葉が隠されているのは言うまでもない。彼はインターネットを「ダイレクトマーケティングにベストなメディア」と位置付けている。その上でダイレクトマーケティング・ツールとしてのオールド・メディアとの共通点、相違点を挙げていった。
*共通点
・ 発信者が誰か分かる
・ インタラクティブである
・ データベースがマーケティングの中心である
・ 通常のダイレクトマーケティングの考え方はほぼ適応できる
*相違点
・ スピード
・ すべてのプログラムのテスト、モジュラー化が容易に可能
・ 「メイビー」 (たぶん)の価値
この「メイビー」情報がとれることがネットマーケティングでは強みとなる。なぜなら「どちらかまだ決められないけど、もしかすると買うかも」という関心度合いの情報はいままでのどのメディアからも得られなかったからある。今までマーケターは顧客の買った、買っていないという「バイナリ情報」しか持っていなかったが、これからは買っていない客層を「メイビー」客とそうでない客に判別し、メイビー客には継続アプローチを頻繁にすることが可能となった。しかも低コストで。
※ ロレックスは実はすりかえられており無事だった(会場拍手)。スピーチはダイレクトマーケティングする上での示唆に富む内容だった。

<分科会セッション>
1999年の分科会コース。デジタルテクノロジーを利用したダイレクトマーケティングのコースが多く新設された。
1.Eコマース (15セッション)、2.CRM (13セッション)、3.B to B(13セッション)、4.データベース・ツール&テクノロジー(13セッション)、5.クリエイティブ(13セッション)、6.ブランド・アドバタイジング(11セッション)、7.マーケティング・インテリジェンス(11セッション)、8.マネジメント・チャレンジ(11セッション)、9.メディア・チャンネル(11セッション)、10.グローバル・マーケティング(8セッション)、11.コア・コンピタンス(6セッション)、12.インシュアランス・ファイナンシャルサービス(6セッション)前年とほとんど同じようなセッションコース。



前の項目 米国DMA&企業視察17年のヒストリー そのJPart1

次の項目 米国DMA&企業視察17年のヒストリー そのK