流通再生戦略
 
第6章 よい顧客サービスの源流
 
プラス思考とマイナス思考
 
 

目の前にゼロを真上にした思考をはかるはかりがあるとする。向かって右に針が振れればあなたはプラス思考、左に触れればマイナス思考とわかる。あるひとつの事象に対応する考え方は二通りある。プラス思考で考えるかマイナス思考で考えるかの二通りである。前向きか後ろ向きかの二通り。どうせならプラス思考でことに当たるべきだ。マイナス思考で対応して決してよいことはない。

シカゴからニューヨークへ飛んだとき、荷物をピックアップしようと待っていると、シカゴでの荷積み作業に問題があったため翌朝にならないと荷物が到着しないとのアナウンスが流れた。ため息と不満の声の中、二列に並ぶように指示された。

隣の列が早く流れた。「畜生!運が悪い」とあきらめ。観察していると隣の列の担当女性は、我々の列の担当者より親切であることに気付いた。愛想のよいその彼女は、乗客に親切にしようと一生懸命で、にこやかに対応、謝罪し、お客様の苛立ちはごもっともと真剣に思っている。

私たちの列の先頭は穏やかではなかった。担当者の表情は苦虫をつぶしたよう。甲高く大声を張り上げ、すべての態度が悪く、怒っているのがありあり。彼女は「いったい私にどうしろと言うのですか?」「とにかく明朝まで我慢してください」「私の責任ではありません」といったセリフ。

彼女ら二人の会話が家に帰っても変わっている。親切な彼女の会話は「今晩のシカゴからの便で荷物に問題があったの。でも乗客は事情を分かってくれたわ」。後者の彼女は「今夜は散々だったわ。シカゴ便に問題があって乗客たちがいらついたのよ。ストレスで疲労困憊よ!」。

彼女が乗客に親切に対応していれば時間もかからず、それほどのストレスも受けずにすんだのだ、ということに彼女は気がついていない。

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