流通再生戦略
 
第3章 小売業は効率−オペレーションが再生の決め手
 
小売業というシステム(仕組み)
 
  第1章で小売業はマーチャンダイジング業であると述べた。学者のマーチャンダイジングの定義(B・ウィルソン)は「マーチャンダイジングとは、適正な商品を、適正な場所へ、適正な価格で、適正な時期に、適正な方法で、適正な状態において提供するマーケティング戦略である」と定義している。つまり、マーチャンダイジングとは、「ファイブ・ライト」(5つのR)。Right Goods (適正な商品)、Right Time(適正な時期)、Right Price(適正な価格)、Right Quantity (適正な量)、Right Place(適正な場所)を実現することである。ところがこの「適正」がかなり難しい。

顧客が求める適正な商品がそう簡単にはわからない。仕入れのタイミング、時期も難しい。どのような価格ならどれだけの数量が売れるかも困難。したがって、経験や勘で、時々POSデータを見て仕入れ商品を決定し、注文し、売場に並べる。ところが売れなかったり、売れすぎたりする。売れなければ商品在庫の山、過剰在庫のはめになる。売れすぎれば品切れ、顧客に文句をいわれ、販売のチャンスも失う。ちょっと油断すると不効率きわまりない。最悪の売場になってしまう。この肝心要の販売数量の読み、そのための適切な発注と仕入れ。この発注から納品、販売までの一連の流れをシステムとしてとらえ、ムダが発生しないようにしなければならない。

トヨタ自動車が1975年(昭和50年)頃から、ムリ・ムダ・ムラを排除するためジャスト・イン・タイム(JIT)に生産することを目指して確立した独特の生産管理方式「トヨタかんばん方式」を発案した。「必要なときに必要な量だけ作る」ことを基本理念とし、在庫ゼロを理想状態とする考え方である。これは米国スーパーマーケットを視察したメンバーからのアイデアであったそうだ。スーパーマーケットは売れただけを後方の在庫売場から商品を補給。店舗の在庫場までは問屋から定時配送される。看板に変わる発注指示はEOS(エレクトリック・オーダーリング・システム)である。

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