流通再生戦略
 
第2章 小売業は人−人材育成こそ再生の条件
 
人をだめにする組織風土
 
 
小売業は人−人材育成こそ再生の条件
小売業はサービス業である。熱い血が流れている人様を相手に商売をしている。お客様一人ひとりは体調も気分も懐具合も人さまざま。大衆でもなければマスでもなく、平均像でもない。生身の人間である。その一人ひとりに適切に接客してはじめて小売業(店)を強くする。お客様に合った品揃えを実現するのも販売員、バイヤーという人間である。人なくして小売業の繁栄はあり得ない。何よりにもまして従業員を大切にすることが小売業再生の条件である。

会社(組織)が大きくなると従業員をだめにする。やる気のない人間をいつのまにかつくりあげる。大きな会社の販売員の目が死んでいる。輝きがない。これは本人の問題ではなく会社の問題である。上司や経営トップは、末端従業員のチャレンジ精神を大切にしない。むしろ殺してしまう。つぎのような理由からである。

  • 「過去前例がない」など過去の成功体験で意思決定する。
  • 官僚化した既存組織でチャレンジを阻む。
  • 「うちでは無理」と確立された会社文化で決定判断する。
  • 失敗したら更迭されるので失敗できない環境(情勢)がある。
  • リーダーシップが欠如し、責任をとらない人物が蔓延。
  • なんとかなるという問題の先送り。
  • 過剰なライバル意識による自己理念の喪失。
  • 縦割り組織が新たな挑戦の弊害になっている。
  • 反論を言う異端者は抑圧される。
  • 「俺がトップだ」とする権力の乱用。
  • 従業員、仲間、外部情報提供者との対話能力不足。
  • 現実を直視しないトップ(問題に目を向けたがらない経営トップ)。
  • これでよいとする自己満足。
  • 何しろどんな変化でも拒絶する。
  • 変わることに対する恐怖感。

このような感情がはびこっているようなら、再生はきわめて難しい。資金繰りや借金の問題ではない。小売業としての原点が滑落してしまっている。このような会社に再生はあり得ない。

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