流通再生戦略
 
第1章 小売業の原点−マーチャンダイジング
 
小売業は単品管理
 
  消費者は売場で「部門」は買わない。「単品」や「メニュー」を購入する。野菜とか肉とか鶏肉とか惣菜とかを買っているのではない。

魚ならマグロ、カジキ、鱈、はつぶり、あまだい、きんめだい、いとより、アンコウ、ふぐ、うるめいわし、ししゃも、ずわい蟹、牡蠣など。野菜なら白菜、タマネギ、メキャベツ、大根、人参、蕪、セロリ、ブロッコリ、椎茸、トマト、ほうれん草など。

メニュー展開なら、12月、汁物メニューでふぐ汁、納豆汁、三平汁、薩摩汁、粕汁、ケンチン汁など。鍋物メニューなら鍋焼き、紅葉鍋、鋤焼、牡丹鍋、すっぽん鍋、寄せ鍋、ちり鍋、アンコウ鍋、石狩鍋、チゲ鍋など。季節にあわせて単品訴求ができなければならない。

ところが品揃え計画が多忙のためなのか、いい加減。昨年どおり、従来どおりなどといい加減さが残っている。厳しいはずの消費者の選択眼にまったくついていけない。厳しいからこそ、しっかりと計画を立てなければならない。

3ヶ月前からどの単品、どのメニューを訴求するか、前年同時期単品販売データ、前月販売単品データを分析し、業界雑誌や取引先情報を参考にし、単品販売計画を立てなければならない。それも3ヶ月前に。そうでなくては消費者に支持される売場づくりはできない。

いかに小売業が数値に基づいた経営をしていないかを示す証拠がある。理由はいろいろあるだろう。暇がない、人材がいない、忙しいなど。だからといっていい加減な品揃えでよいわけはない。できない理由より、いかにしたらできるかを真剣に考えてもらわなくてはならない。

証拠はつぎのようなことだ。データを分析したいというのでデータをもらう。単品分析を試みる。なんと野菜、精肉、鮮魚、果物部門の単品コードがふられていない。データは野菜、鮮魚、精肉としか記録されていない。長ネギとか、白ネギ、鹿児島産タマネギ、男爵ジャガイモ、サンマ、カレイなど単品コードがないのだ。あるのはキューピーマヨネーズのようなソースマーキングされている商品のみである。スーパーマーケットの主力商品である生鮮3品は単品売上データがない。恐れ入る。生鮮3品の品揃えは「勘」と「経験」で行っているのであろうか。

POSメーカーなど情報機器メーカーは盛んにバスケット分析など高度な分析の必要性を語る。とんでもない話だ。単品コードがふられていないデータでバスケット分析すると、最も関連購買される商品は「野菜」と「野菜」、あるいは「野菜」と「鮮魚」などとなる。その関連は90%以上とでてくる。当たり前の話である。1000万円もするデータマイニングという最新鋭の道具を購入しなくても「野菜」と「野菜」の関連があるのは当たり前。問題は、最新鋭の道具にあるのではなく、マーケットを分析するような分類体系ができていないことにある。まず、手始めにやるべきことはマーケットを分析できるような分類コード体系になっているかどうかを検討してみることだ。バイヤーは、自分の担当の販売商品を単品で即座に把握できるように、いますぐ、システムを再構築しなくてはならない。

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