4 山越え〜現状打破への挑戦

 
改善ではなく改革。改善は現状を肯定、改革は現状をひとまず横において"ゼロ"からの発想でもろもろを検討する。どちらも検討だけでは何も起こらない。どちらも「実行」されてはじめて結果を生み出すことができる。山を越えていくような努力をし、いつか違った会社にしてみたいものだ。
この章で長年指導してきた経験から、時代にマッチしなくなりつつある仕事のやり方、心の問題などについて述べ、今後あるべき方向、心の持ち方について提言する。
以下、4項目に分けて述べてみたい。
1. 販売の改革
2. 情報の改革
3. MD(マーチャンダイジング)の改革
4. 販促の改革

4−1 販売の改革
マスからのテイクオフ(離陸)、そして顧客識別販売という新しい"国"へ着陸する。これが販売改革の中心思想である。これまで行なってきた折込やテレビ広告などマス媒体で実施してきた販売方法を横において"顧客は、皆、同じではない"とする顧客を識別して展開するマーケティング手法について理解しようとする意識を持っていただきたい。これを否定したら未来はない。疑いからは何も起こらない。

カード発行の目的を明確に
顧客特定する販売方法は、小売業の場合、カード(クレジットカードでもポイントカードでもかまわない)を発行し、顧客ごとの購買記録を集めることからスタートする。ほとんどの小売業はカードを発行している。しかし、カードを発行した目的があいまいなまま漠然と実施している。カードを発行した目的を失っている。「目的不明確」「目的忘却」「目的喪失」は死人と一緒。何も生み出してくれない。振り出しに戻って関係者を集め、プロジェクトを編成し、カードを発行した目的、カードを展開している理由について熱い議論を展開して欲しい。口論、口論、ファイト。口論が相互の納得を生み出し、意思統一ができ、カードの展開に魂がこもる。
「カード発行した目的は何でしょうか?」。よく質問するが答えが返ってこない。一般にカード目的は大きく以下に分けることができる。
1. キャッシュレス・・・未来収入の先取り
2. 金融業・・・・・・・利息収入ビジネス
3. リレーションシップ・マーケティング・・・カスタマーシェア、ライフタイムバリュー最大獲得
キャッシュレスは、お金がなくてもカードで購入できるというカード機能を販売促進に利用することにある。顧客が来月の給料、年末のボーナス(以上、未来収入)をカードで消費する。そのカード機能で消費を促進する目的である。
金融は、小口現金の貸し出しを事業として始めること。貸し出しによって顧客から金利を稼ぐことにある。キャッシュローンで設けるビジネスだ。
リレーションシップ・マーケティングは、消費枠シェア(カスタマーシェア)を高めていくこと、長期消費枠を最大にしていくことが大きな目的になる。流通小売業界がカードを発行する最大目的はリレーションシップ・マーケティングの実践にある。さて、あなたの会社は何を目的にカードを発行しているであろうか。熱い議論を重ねて目的を明確にして欲しい。

カードブランドを高める
カードのつぎの課題は消費者に自社のカードを認識させることにある。カードの魅力を開発し、消費者が望んで入りたくなるようなカードにする必要がある。現在カードを発行しているが、消費者の期待感、好奇心を高める努力が足りない。何が何でもカードが欲しいというカードではなさそうである。なんとなく会員を募集し、なんとなくカードを扱っている。漠然とぼんやりと目的喪失で、カードを取り扱っている。カードブランドを高めていこうとする強い意志が感じられない。企業名より"カード名称"が有名になるぐらいにカード名称のブランド化が必要になる。トヨタといえば誰も車を連想する。ゼロックスはコピー、ヤフーはインターネット、富士はフィルム、IBMはコンピュータ、デルはパソコンなど商品を連想するほど企業名がブランドになっている。カード名で企業を連想されるぐらいにカードのイメージを高める必要がある。

ブランド化の必須条件 単純明快
単純明快は販売効率を高くする。伝説のマーケターと評価されるシュガーマンは「単純明快はきわめて重要で、メッセージが持つ複雑さの分だけ販売効率は下がる」と述べている(『シュガーマンのマーケティング330の法則』フォレスト出版)。シンプルな言葉はインパクトが強い。逆に複雑怪奇な言葉は顧客の頭に残らない。学歴があろうとなかろうと、小学生であろうとおばあちゃんであろうと相手が誰であれ、瞬間に理解されるようなシンプルさが重要である。ポイントカード会員募集の特典のメッセージをサンプルに単純明快さを考えてみる。会員特典として会員募集に印刷されている文章である。
・「100円で1ポイント、500ポイントで500円クーポン」。要するに1%還元
・「200円で1ポイント、500ポイント500円クーポン」。要するに10万円購入して500円もらえる。0.5%還元の意味。
・「1000円10ポイント、5000ポイント500円」。ポイントを大きく見せるための手法でしょうか。100円1ポイントの方がわかりやすい。
・「200円1ポイント。お買物2万円以上100ボーナスポイント、3万円以上200ボーナスポイント、5万円以上500ボーナスポイント」。数回実績を経験したお客様だけがわかる特典。カード会員全員には浸透しない。このような特典、本当に必要か議論を要する。
・鉄道会社が親となっているグループカード。たとえば、ホテル1泊100ポイント、別のホテル利用では50ポイント、その他関連企業200円1ポイントなど複数のポイント基準を会員募集リーフレットにページ一杯印刷している。誰が真剣に読むであろうか。従業員だってきちんと読まない。
・「あれこれ集めてあれこれ選ぶグルメポイント、ボーナスポイント リサイクルポイント・・・・」。別枠で、グルメポイントとは商品ポイント、ボーナスポイントは雨の日ポイントやタイムサービスポイントなどと説明している。これって単純明快だろうか。
・複雑怪奇なのは「100円で1ポイント、400ポイントで1枚ポイント券、ポイント券3枚で1000円分お買い物ができます」。このような募集パンフレットが全国的に広がっている。要するに4万円購入したらポイント券1枚、つまり12万円購入したら1000円。0.833%の還元率ということ。まず、自社の会員募集パンフレットのメッセージを教材に、単純明快であるかどうかを検討していただきたい。「これでもか」というくらい徹底的に単純化する。単純化によって、会員、従業員、役員の理解が深まる。

会員特典モデルの選択
単純明快さを追求するためには、カード特典の「誰でもすぐわかる」単純化、「わくわくする」期待感・好奇心の開発が必要になる。期待を持たせる特典、期待を膨らませる特典、好奇心を引き出す特典は何か、口角泡を飛ばしながら討論する。なんとなく、安易に決めるのは絶対さける。
一般に特典は、以下の4パターンがある。
・ポイントモデル
・会員価格モデル
・特権モデル
・混合モデル
ポイントモデルは100円に1ポイントなどポイントを提供。英国テスコは単純さを追求するため1ポンド1ポイント、1ポイント1ペニー還元のモデルを採用した。
会員価格モデルは、カード会員は安い価格(会員価格)で、カード非会員は通常価格で購入するというモデル。全米ナンバーワンスーパー、クローガーは会員価格を採用。米国スーパー業界はこのモデルが圧倒的に多い。
特権モデルは、たとえば駐車場無料利用、特別優待、無料宅配、サロンの利用、ファッションショーご招待など会員に特権を与えること。
混合モデルは、たとえばポイントと会員価格を併用するなど、複数の特典モデルを混合する方法である。
以下、各モデルの筆者の評価を述べる。
ポイントモデルは「貯める」行為であり、女性に受ける。ショッピングは女性の専売特許みたいなものだからポイントモデルが好まれる。エアマイルポイント、VISAなどクレジットカード業界はポイントを宣伝にシェア争いをしているのでポイントモデルは消費者に普及している。この意味からポイントモデルを採用したほうが得策といえる。
会員価格は、いわば値引き。買い物の一瞬の喜び。「貯める」という感覚はないので継続性が薄く、女性には不向き。男性向きと言える。消費枠シェア、長期消費枠狙いのマーケティングを追求するなら不向きだ。
特権は、提供されると最初は嬉しいが年々権利を高めていかないと当たり前になり、年々期待感や好奇心が下がる。この特典モデルは、離反防止になっても買上を促進する戦術としては使えない。
混合モデルは、単純明快さ追及からは遠ざかるので、絶対に避ける。浸透が難しい。

ブランド構築の諸手段
カードをブランド化するには消費者に、雨あられのごとく、メッセージを送り、認知してもらわなくてはならない。
「ベストなカード」「地域一番のカード」「これ一枚でショッピングは音楽になる」「カードはあなたのオブジェ」「いつもあなたの脇役。されど最高のアシスタント」など消費者が「はっ」と関心を持つようなキーワードを決めて、あらゆる媒体で露出させる。スーパーなら折込(チラシ)に、店頭ハンドビラに、商品ニュースに、POPに、ポスターにどんどんカードのロゴマークを印字し露出する。百貨店ならもっと印刷媒体が多い。すべての媒体でカードロゴを露出する。販促関係者は、カードブランド構築のためのカードの露出を求めるよう意識して欲しい。カードブランドを高めるポイント特典以外の方法がある。以下の4つをあげておく。
・広告
・的確なクーポン
・定期的なニュース
・クラブ雑誌
・アンブレラ(傘)
広告はテレビ広告、新聞広告、ラジオ広告など。企業広告よりカード広告を徹底する。イオンが20日、30日「5%値引き」のテレビ広告をしているが、ローソンにしてもヨーカードーにしてもカード広告はほとんどしていない。カード戦略にまだ力が入っていない。
クーポンの代表的な事例は、英国最大のマーケットシェアをもつテスコ。年4回のポイント償還バウチャー(商品券)と同時にクーポンを送っている。テスコは「年4回のクリスマスプレゼント」として会員からの人気を博した。定期的ニュースは、会員向けの小冊子。企業の取組、今後予定しているイベント、新設のコーナー、新サービス開始の案内など記載したもの。大企業のテスコも米国3店舗の地域スーパーであるドロシーレーンマーケット(DLM)も年4回の定期的なニュースをダイレクトメールで送っている。ニュースの掲載内容や記事は素晴らしく美しい。
参考までDLM2000年9月号の会員ニュースから記事の見出しをピックアップしてみる。
・DLMのおすすめチーズ ドイツチーズ
・ミートコーナー 最高峰ポーク、デュ・ブレトン
・新発売 玄米寿司
・DLMクッキングスクール
・ドッティに聞こう!
・糖尿病の方向け店舗内ツアー
・ナニーニ博士のコーナー 低血圧と糖尿病
・ソーセージ野外バーベキュー
クラブ雑誌は入会を申し込んだ会員へ送る会員ニーズに応えるものになっている。より小さな顧客セグメントへのニーズ情報誌である。テスコは、ブーツ(Boots)に対抗してベビークラブを立ち上げ、初めて赤ちゃんを産む女性へ安心感を与える雑誌を妊娠から2歳児まで8時期に分けて8冊の情報を届けている。エモーション(感情)に訴求した信頼を得る手法である。
アンブレラの代表格は、JALやANAなどエアマイルポイント。JALやANAのマイルポイントカードで専門店などポイント提携小売業でのショッピングでポイントがつく。データは、カード発行(親)に蓄積されるため小売業は顧客データによる販売促進は不可能になる。テスコは、親になるならよい戦術だが、傘下になるなら取るべき戦術ではないと述べている。

販売の改革とイノベーション
今後のマーケティング主題は、過去の販売手法を徐々に捨て、新たな販売のイノベーションを起こすこと。
イノベーションと創造を混同する人が多い。双方の意味は違う。創造とは新しいものを"考え出す"ことで、イノベーションは新しいことを"実行"すること。実行できなければイノベーションは生まれない。
昔ながらの古い販売は顧客を特定せず、顧客は同一の行動パターンや消費態度を取るとする前提で実施する販売方法。新しい販売で顧客は皆違った行動するという前提で、顧客購買データから顧客を識別して販売する方法である。
不特定多数を一束にして仕掛ける販売方法から顧客をセグメントし、特定のセグメントに仕掛ける販売方法に切り替える。そのためにカードを発行し、一人ひとりの買い物データを蓄積し、データから特徴や傾向を見つけ、似たような顧客グループに区分けして、グループニーズに合わせて別々に販売を仕掛ける販売方法を採用する。過去の販売方法との決別である。ゼロからの出発であり、改革または販売のイノベーションである。
これまでのやり方はもう通用しなくなっている。常に変化しているマーケットを鋭く観察し、売場も商品もサービスも変化に合わせて変えていかなくてはならない。
変化するマーケットを数値に置き換え、数字が意味する意味を読み取り、解釈し、議論ばかりするのではなく、失敗を恐れず、実行する意識、意欲、感情が極めて重要になる。顧客のバスケットデータを経営に100%利用する販売組織に切り替えていく方向を目指す。

4−2 情報の改革
データビジネス文化をつくる

データビジネスは筆者の造語。データを蓄積し、データを情報にし、情報が意味するものを読み取り、すぐさま行動(アクション)を起こすビジネス文化を意味している。主観的な勘や経験だけでなく、数値という客観情報を活用して取るべきアクションを即座に決定し、即座に実行する。
簡単な喩えがある。ダイエットに挑戦しているご婦人は体重計(ヘルスメーター)を離せない。体重計は、毎日、エクササイズに励む努力の成績を示す。努力行為に通信簿がないと継続できない。ばかばかしくてやっていられず、すぐに止めてしまう羽目になる。仕事だって同じ事。努力した結果がわからなければ、努力しなくなる。あらゆる立場のあらゆる努力に"成績表"を示す必要がある。今の小売業に、成績表を"すぐ"示すというところが欠落している。ライブ放送、ライブ演奏のような生々しい情報をすべての従業員に与えていく必要がある。店の食堂、事務所のパソコンで日々の努力の成績表を取り出せるようにする。
マーケターの大御所セルドア・レビッツ教授は「数値を通して事業を見る習性を定着させる」ことが重要だと述べている。量販店のリストラが吹き荒れ、早期退社された大手流通経験者が中小小売業への移籍が流行している。元ダイエー、元イトーヨーカドー、元ジャスコ、元マイカル、元セブンイレブンなど。彼らは、元の会社の成功体験を、今の会社に持ち込み、暴れまわる。過去の成功体験はある面では大きく役に立つが、反面、ある面では改革の大きな障害にもなる。所詮、元の会社での過去の成功体験だからである。勘と経験、過去の権威だけに依存する思考から、すぐさま決別する必要がある。改革はあくまで"ゼロからの発想"を基本とする。

「管理」数値と「現場」数値の違い
管理数値の代表的なものは損益計算書(P/L)や貸借対照表(B/S)だが、小売業がよくなじんでいる管理数値は事業別や部門別の「予算数値」と「実績数値」。
予算を達成できているか、前年比をカバーしているかが重要な数値。昇格・昇給の条件になるので、それこそ"命がけ"数値になる。予算達成者は、人格関係なく、良い人間。予算 未達成者は、まるで極悪人。会社業績悪化の犯人のような扱いを受ける。月度の営業会議は地獄絵の様相を呈する。怒号が飛び交う。未達者は、とにかく、忍耐する。怒号が治まるのをひたすら待ち続ける。この管理数値のみがあまりにも強調されすぎている。
筆者が述べるデータビジネスとは、管理数値のことではなく、アクション数値を通じて現場を見る習慣をパートさんも含めた現場に浸透させていくことを意味している。トヨタのいう"現場力"から学ぶべきことが多い。小売業は、顧客と向き合う現場でのみしか現金が入ってこない。どんな怒号が飛ぼうとも会議からは一円の金も入らない。

アクション情報を重視せよ
以下のような行動(アクション)を取ったら、翌日に行動結果を判断する情報を"現場"に提供する。ダイエットを実施しているご婦人に体重計を準備するに似ている。
・月○日午後4時;A店、B店、C店比較し、「刺身こんにゃく」の販売数数値を見たらA店は7個売れているのにC店は2個しか売れていない・・・・・問題の発見
・月○日午後4時30分;現場に行く(答えは現場にある)。C店刺身こんにゃくの陳列は棚一番上の5段目・・・問題の原因
・月○日;すぐにパートさんに、2段目に移動を指示・・・アクション指示
・翌○月○日午前10時;翌日、行動した結果をパートさんと一緒になって情報で調べる。なんと12個(6倍)売れていた。・・・・問題と原因と結果情報の共有
これが筆者の唱えるデータビジネスである。
このような情報と少しのセンス、ちょっとした好奇心があれば誰もが指導者になれるし、業績を上げることができる。現場で働くのは犬畜生ではなく、血の通った感情も意欲も持った人間そのものである。しかし、本部本社に勤務している人たちは現場がもっているエネルギーを活用しようという意識がまったくない。大きな人間資産の浪費現象になっている。
スーパーが現場でできる"あるべきアクション"をサンプルにして主張を述べる。
スーパーの売場で行なう基本のアクションはつぎのようなものがあげられる。
・アクション1;陳列位置を変えてみる
・アクション2;関連陳列をしてみる
・アクション3;エンド陳列を変えてみる
・アクション4;POPをつけてみる
・アクション5;フェース数(通路にむけて並べる商品パッケージ数)を変えてみる
アクション検証リストを準備する。実施するアクション項目単位にアクション実施商品名、実施前販売数量、実施後販売数量を記入する簡単な書式。記入する欄をできるだけなくし、必要最低限、単純明快が重要。欲張って複雑にしてはならない。すぐに記入しなくなるからである。シンプルをすべてに優先する。
現場行動の基本は、その場で「褒める」「叱る」。これができないマネジャーは部下を育成する資格はない。
さて、アクションシートの使い方はつぎのような感じになる。
・アクションシートを担当従業員に配布する
・担当者は、前日帰宅前、明日の行動をアクションシートに記入する
・記入した担当者は、アクションシートボックス(大きな投票箱)に記入したアクションシートを投函する。必ず、投票箱を準備する
・店長(または部門長)は、帰宅前、投函されたアクションシートを回収し、目を通しておく。(紛失しないよう意識を高める)
・翌朝、店長(または部門長)は、担当者と一緒になって売れない原因を考え対策を練る。
・翌日、事務所や食堂に設置した簡単に単品情報を取り出せる"アクション情報端末"で担当者と一緒になって結果を調べる
・以上の繰り返しで、数値に基づいて行動する習慣を現場に植えつける。

情報進化と感動退化のアンバランス
25年前、縦横の集計、前年比計算などすべて電卓。現在、電卓不用。すべてパソコンソフトのエクセル(Excel)がやってくれる。とんでもない情報革命である。25年前、グラフは手作業で作成していた。一枚作成するのに1時間かかった。現在、ソフトで一瞬にできる。カラー印刷も瞬時。恐ろしく進歩した。
POSのソフトメリットである単品販売情報を分析するのに丸一日かかった。情報によってはデータ量が多すぎて、一晩、大型コンピュータ(汎用機)を回しても結果が出なかった。現在、ほんの数秒で情報を取り出すことができる。
しかし、情報は活用されない。なぜだろう。
人間は科学ではないので未知の部分が多い。「人間とは何ぞや」とソクラテスの哲学の世界。人間がわからないから進歩させようがない。進歩させる設計図がかけない。考え方はまちまちでなかなか意見が一致しない。機械のように進歩しない。
おまけに社会のめまぐるしい進歩が人間の感動を退化させている。知らないことが多すぎて、わからないから感動できない。感動がなければ興奮がない。興奮がなければ情熱は生まれない。つまり、何事にも挑戦しないようになってきている。
感動しなくなった人間、感動しなくなった従業員に感動させるにはシンプルな「教え」が必要。理解できる情報を与えることができれば情報に感動し、情報を利用するようになる。身近に感動できる情報を与える仕組みを準備することが肝心のように思う。

増幅するデータの単純利用
洪水のように増幅するデータも発達した情報技術を利用し、単純化すれば利用は簡単化される。簡単だと"見たい"という好奇心が生まれる。好奇心が生まれれば、パソコンに向かうようになる。パソコンで情報を出すと、体重計のように努力結果を成績表に示すから感動する。感動すれば、弾みが生まれる。弾みが生まれればハリケーンのように凄いスピードで現場に広がる。
スーパーを事例に単純明快な情報活用を述べる。
・スーパー各店舗から毎日、POS単品データが本社に収集される
・本社は、このPOS単品データを1000万件10分程度で、データウエアハウス(データ保管倉庫)に書き出す。
街中駅前スーパーの月間データ量は70万件、日になおすと約2万件。


1000万件なら500店舗データを10分程度でデータウエアハウスに書き出す。凄いスピードである。(三菱電機ダイアプリズムというコンピュータの実測値)
中を調べると、一日当り購入される商品数は約4000商品名、月間1万3000商品。
・データウエアハウスでは何も処理をせず、そのままPOSデータを保管しておく。
・店舗の事務所や食堂にパソコンが設置されている。操作用のキーボードは意図的にはずしておく。キーボードアレルギーでパソコンを避けている人の障壁を取り除くためである。操作はすべてマウスクリックでできるようになっている。
・翌朝、部門長やパートさんは、パソコンで、昨日のアクション結果を調べる。電源、暗証番号は店長が入力し、誰もが情報を取り出すことができるようにする。回線はインターネット回線。
・分類は大・中・小分類や単品、期間は年間でも月でも週でも特定日程でも(いつからいつまで)、情報項目は販売数量や販売金額、平均単価など
・グラフも瞬時に表示
現場力を高め、現場従業員を戦略化するための情報活用の一つのあり方である。

パソコン(IT)を武器化せよ
ひとつの提案がある。是非、企業内に「パソコン利用劇場」というイベントを導入して欲しい。正社員はもちろん、パートさんも役員も受講が必須条件。パソコン利用できない従業員は従業員である資格はないとルール化する。役員も例外ではない。
4泊5日で「エクセル」「ワード」「メール」操作をできるように活用集中講座を定例化する。
何も難しいことはなく、集中講座により、誰もが操作できるようになる。自分の連絡は自分で行なう。自分で計算できる計算は自分で計算する。エクセルは電卓より計算が簡単。利用しない手はない。エクセルでの計算は初めての人に感動を与える。まず、感動を与え、パソコンになじんでもらう必要がある。

4-3 MD改革
バイヤーの責務

データは現状を映す鏡。売場が顧客に支持され続けているか、見放されつつあるかを表現する。店合計や部門業績が時間と共にジリ貧であれば顧客の支持を失いつつあると判断できる。
ここからが人間の出番。頭脳の出番である。
支持されなくなりつつあるということは、販売している商品が商圏顧客のニーズに合わなくなりつつあるということになる。取扱商品を変える必要がある。いつもと同じように行動していては店が陳腐化してしまう。なおさら顧客から見放される。変化なく、いつもと同じ売場なら徐々に売場価値が減価する。カードデータから主流顧客をしっかりとらえ、個別に仕掛け、彼らの購買行動や購買態度を変える作戦に出なければならない。購買行動、購買態度を変える原動力(エンジン)は、バイヤーのマーチャンダイジング活動にある。
縦割り売場の病根 
現在の売場の問題は昔ながらの商品別レイアウトにある。顧客は食卓をイメージしてショッピングする。鍋料理なら鍋料理の野菜、鶏肉、調味料、飲み物など関連して購入する。ところが売場は関連商品陳列ができない。たとえば、白菜と鶏肉と並べて陳列するクロス陳列はできない縦割り管理になっている。つまりクロスマーチャンダイジング不可能な組織管理である。
縦割り行政は官僚の世界ばかりではなく、民間企業どこでもある話。小売業も例外ではない。仕入れから売場まで縦割りになっている。
農産(野菜・果物)、海産(鮮魚、貝類、塩干)、畜産(牛肉、豚肉、鶏肉)、和日配(納豆、豆腐、こんにゃくなど)、洋日配(牛乳、ヨーグルト、デザート類)、一般食品(業界ではグロサリー)、冷凍食品などに売場が分割され、仕入れ担当者も農産、海産、畜産と別れている。バイヤーの権威が売場まで直結している。
鍋の時期、問題が起こる。
・鮭と鶏肉と白菜でメニュー化した和風鍋は、農産・海産・畜産の担当ではない。誰が担当するのか。
・焼肉のたれは、精肉売場でも一般食品売り場でも販売されている。つまり、業者ごとに焼肉のたれの陳列場所が異なる。
・すき焼きとビールは別々の売場で売られている。
・フルーツ缶詰を購入している顧客がヨーグルトをよく購入しているが売場は遠く離れている。
・サラダ売場とドレッシング売場は別になっている。店によっては30メートルも離れた売場に、別々、陳列されている。
顧客は、店内をぐるぐる回りながら今夜の食事のメニュー食材をかごに入れて歩かねばならない。時には、買い忘れることもある。近くのコンビニにおいてあれば、問題なくすむが、忘れてしまったら、再びスーパーに逆戻り、またレジに並ばなくてはならない。人生で一番嫌なことはレジに並ぶこと。それを小売業は顧客に平気で強いている。何が顧客志向だろうか。ばかばかしくて話にならない。
クロスマーチャンダイジングなど「夢のまた夢」。今世紀中に実現するか甚だ疑問である。

バイヤー習慣病
幅広くバイヤーに接したわけではないが、つぎのような業務姿勢がみうけられる。
「試食・試飲しない」。つまり、販売する商品を食べたことがないから美味しいのか不味いのか知らない。なぜその商品を取り扱っているのかさえ理由がわからなくなっている。
「料理する機会が少ない」。料理は奥さん、つまり、料理の知識がない。
「買い物しない」。これも奥さんの担当。買い物しないから自店や他店の買いやすさや欠品、価格など情報収集ができていない。
「取引先を訪問しない」。商談日に呼びつけるだけで自ら取引先を訪問することがないので、意図的に持ち込んだ商品だけの商談になり、商品情報が限定される。ましてや新しい取引先開拓のため現地訪問は極端に少なくなっている。
「関連書を読まない」。読書する習慣がなく、自らを刺激することがないので、業務はいつも通りで変化がない。
「他部門の品揃えに興味を持たない」。顧客は食卓を意識しているのに、バイヤーは担当の単品のみ考えている。したがって、他の売場商品との関連は、まったくなく、顧客にとって買いにくい売場になっている。関連販売する商品が同一売場にない。
「情報を見ない」。仕入れて販売した商品の売れ行きがどうであったか数値での把握、売れた理由、売れなかった理由を数値で読み解く習慣がない。
「情報を集める意識が低い」。業界紙、新聞、書物、インターネットなど数年前に比べたら恐ろしいほど参考情報を収集できる。添加物情報(たとえば『食品の裏側』安部司著東洋経済新報社)、安全・安心商品の情報(たとえば『食べたい、安全!』日本子孫基金講談社)、良い食品関連情報(たとえば『食品を見分ける』磯部晶策著岩波新書)など読み、ノートをとり、消費者に知らせる意識はない。あってもほんの一握りのバイヤーだけであろう。

以上、8つ取り上げたが、これらは"悪い習慣"、生活習慣病のような習慣病といえる。
生活習慣病は、糖尿病、脳疾患、心臓疾患など成人病の原因になるようにバイヤー習慣病は売場に病原菌を蔓延し、会社倒産の原因になる。恐ろしい。対策は簡単。習慣病の逆を習慣化すること。
「試食・試飲する」「料理する機会を多くする」「買い物する」「取引先を訪問する」「関連書を読む」「他部門の品揃えに興味を持つ」「情報を見る」「情報を集める意識を持つ」。
良い習慣に努力しないバイヤー、心を入れ替えないバイヤーは仕入れ業務からはずし他の業務に移動させる。
情があり、誠意があり正直、熱心な人物を新しいバイヤーに任命すればよい。
魚のプロとか精肉のプロなどは二の次。誠意があり正直であれば、取引先が一生懸命指導してくれる。
気合あり、野心あり、燃える心を持ったバイヤー集団を作り上げることがMD改革の重要な課題になる。

美味しさを求めて行脚せよ 
バイヤーの使命(ミッション)はなんだろうか。それを深く考えたことがあるだろうか。
バイヤーの使命は、消費者の購買代理業である。地域住民に成り代わって、全国・全世界から消費者が求めるものを低価格で提供することがバイヤーの使命である。消費者が、商品を購入するために、あちこちでかけることが実質的にできない。その代わりをバイヤーが行なっているのである。大げさだが、地域住民の命を守るわけだ。決して食品メーカーの販売代理ではない。
時代はめまぐるしく動いている。2000年の雪印乳業の集団食中毒事件、2001年BSE(牛海綿状脳症)感染牛が日本で発生するなどから消費者の食に関する関心が高まり、添加物や農薬に対してかなり敏感になってきている。安全・安心が流行語になっている。
また、流通業界競争激化で、小売業があまりにも低価格を追求したため、食品メーカーは原材料コストを引き下げるため国内原料を使用せず海外原料を取り入れることが多くなった。効率が最優先されてきた。そのため、昔のような美味しさが失われつつある。
美味しくない果物、美味しくない豆腐、美味しくない牛乳、殺菌液に何度もつけられた美味しくない野菜サラダ。このような商品がコンビニやスーパーに氾濫している。味はうまみの添加物を多量に使用する。自然の美味しさではない。
バイヤーは、売場に昔の美味しさを取り戻して欲しい。安売りだけがマーチャンダイジングではない。
筆者は流通業界へマーケティングや情報システムを指導するのが専門だが、ある指導小売業から"こだわり"商品の相談があり、専門分野ではないがここ数年、情報を集め、商品を取寄せ試食したり、小売業の方々を招待しメーカー説明会を実施したり、工場を訪問したり、美味しさを求めて動いている。
岩手県平川食品の豆腐は昔の豆腐。懐かしい味。岩手県産の大豆を使った豆腐である。
岩手県中洞牧場の牛乳、これも昔の牛乳。太陽も草も知らない牛乳製造マシンとなった牛から搾った牛乳ではない。岩手県釜石唐丹町(筆者の故郷)留畑商店の三陸わかめはスーパーで販売しているわかめと品質が違う地元で人気のわかめ。肉厚で新鮮。岩手県ハヤチネフーズののむヨーグルトは関西が中心のイカリスーパーのヒット商品。岩手県岩泉産業開発の龍泉洞のナチュラル・ミネラル・ウォーターは食のオリンピックと言われるモンドセレクション大会で最高品質賞受賞した水。徳島県野田ハニー食品工業のやまもも、すだち、ブルーベリー、ざくろジュースは四国のスーパーの定番商品。大阪の清水一芳園の香檳(シャンピン)烏龍茶は最高品質。中国大陸産一級烏龍茶葉の50倍もする価格の台湾香檳烏龍茶葉を原料として使用。英国王室に最も愛されたお茶。
筆者が訪問した会社のなかからピックアップしてみた。伝統の味、美味しさを追求している小規模のメーカーである。バイヤーは、美味しさを求めて、旅をする必要がある。

たかが牛乳、されど牛乳 中洞牧場の挑戦
「紙パックの牛乳を飲んでいました。偶然見たNHKドキュメンタリー、酪農家を扱った番組を見て心底びっくり。水より安く買い叩かれる牛乳、農協からの借金に苦しむ酪農家。牛乳製造マシンになってしまった牛たち。お払い箱になる牛が車に乗せられていく表情や過酷な搾乳の無理がたたって、子牛を死産した母牛の恨めしそうな目の映像が忘れられません。そんな牛乳は飲みたくないと心から感じました。紙パックの味がしない瓶入りで、低温殺菌、ノンホモナイズドで、幸せな牛からしぼ搾られるという理想の牛乳を味わうことができ、有難うという気持ちです」。岩手県宮古市田老町中洞牧場牛乳を飲んだ一消費者の声。
効率優先の牛乳生産の"常識"に挑戦し、春夏秋冬、山地放牧。輸入飼料一切使わず自然のまま育てている牛から搾乳した低温殺菌牛乳を生産している中洞さんに会って3年になる。太陽も草も知らない牛たちから搾乳した牛乳ではない。昔の牛乳の味がする。
中洞さんが大学時代の恩師の言葉「1000年の牧場を作れ」に「これだ」と意を決しはじめたのが20年前。誰にも相手にされず狂人扱いされたそうだ。だが、今、時代が中洞さんの想いに追いついた。消費者はやはりホンモノを求めている。「価格だけではない」と中洞さんは言う。ホンモノへの挑戦。志しさへあれば時代が受け入れてくれる。消費者は馬鹿ではない。

4−4 販促の改革
チラシは不特定、ノンターゲットの販促

お殿様のお通り、皆、頭を下げて正座を。「そこの人、頭が高い」。マス・マーケティングのお通りである。電通などマスの大御所。大御所に従っていればマーケティングはうまく行く。そのような無意識下の安心意識がある。皆と同じようにしておくと安心である。したがって、余裕資金のある会社は派手に儲かり、資金のない会社は少しばかりのお裾分けになる。
小売業界も例外ではない。チラシという安心・安全な販促に今でもすがっている。すでに急速に効果を失っているのだが。チラシ依存のあるスーパーの事例を見てみよう。チラシ掲載10商品。それぞれの購入客数、購入金額、荒利益額をデータベースから取り出してみた。
・断然お得キャノーラ油 金額で44倍
・だしの素  金額で37倍
・雪印6ピースのチーズ 売上金額89%、荒利益額はマイナス
・豚こま切れ、若鶏胸肉は、荒利益額マイナスになった。
・10品合計売上金額は2.6倍、荒利益額はほぼ同じ。
12月1日のデータだが、チラシを打たなかった前週日曜日の1日の合計に対し、この週1日の合計客数は105%アップ、金額は110%アップだった。荒利益額はトントン。つまり、チラシ代金、チラシ準備にかかった作業人件費を考えると利益ベースで損をしている勘定になる。

販促費用は経費でなく投資
販促費は経費に属する。チラシ代金は経費と考えるのが普通だ。しかし、経費と考えるのではなく投資として考える。思考の転換が必要だ。
投資とは、利益を得る目的で資金を投下する意味である。利益を生むかもしれないが損することもある。できるだけ損をしないように情報を集め、分析し、資金を投下する。これが投資の概念である。
代表的な投資は株式投資。四季報や新聞、業界情報、インターネット情報など集めて値上がりしそうな株に投資する。投資はリターン(見返り)を期待する。投資するか否かは情報を分析しリターンが多いか少ないかで判断する。
1000円投資してリターンは500円なら「やめておこう」ということになる。リターンが1500円とか2000円なら儲かるから投資するだろう。問題は確率。100%確実なら必ず儲かるから誰でも投資するが、確率が低ければ投資しない。
さて、チラシは1枚当り、折込代を含めて、7円かかるとしよう。10万枚で1回の投資が70万円。これが確実に回収できるなら問題はない。つまり、荒利益額が確実に70万円アップするなら投資する価値がある。
荒利益率25%と仮定すると70万円を確実に回収するためには280万円の売上アップが必要になる(投資金額70万円÷荒利益率25%=必要売上高280万円)。単価9円で90万円のチラシなら360万円の売上アップが必要になる(投資金額90万円÷荒利益率25%=必要売上高360万円)。単純な計算である。
安売りによって荒利益率が下がってしまうと必要な売上額はさらにアップする。
チラシにかかる費用を計算し、それをカバーする売上目標をしっかり立て、目標を達成できたかどうか評価して欲しい。しかし、実際は、毎週チラシを打つのが習慣になってしまっていて、投資対効果分析は行なっていないのが現実である。前年と同じように、予算があるから、何となく、無意識に、取引先の特売商品提案を掲載しているに過ぎない。経費としか考えていない。マンネリになっている。

リターンを計画して結果を評価する
ターゲットメールによるターゲット販促についてのリターン(見返り)の計算方法を紹介する。不特定多数での正確なリターン計算はできないが、顧客特定のリターンは正確に計算できる。

計画欄と実績欄がある。ダイレクトメール対象人数から投資利益率まで15項目に○枠数字で計算方法を示した。
"スプリング"企画としてダイレクトメールを送り対象顧客を1万人とし計画し、データベースから9915人を選択した。
期間中ダイレクトメールに掲載された売場で購入されたお客様は3242人、計画に対し242人増。購買単価大幅増、荒利益金額が計画を大幅に上回った。投資総額(売上原価+販促費合計)に対し34.9%の利益率になった。つまり、投資に対し約35%増のお金を稼いだことになる。
筆者は、数多くのDM企画投資利益率を計算したが、高い企画低い企画の傾向が見えてくる。
・売り出し案内企画は反応率低くリターンが低い
・20%引きDM企画は反応率低くリターンが低い
・クリアランスDM企画は反応率がまあまあだがリターンが低い
・ボーナスセール企画は反応率も低くリターンも低い。
・成人式フェアなどシーズン企画は反応率が低くリターンも低い。
・ポイントでお買い物は反応率高くリターンも高い
・商品限定の企画は反応率も高くリターンも高い
・ブランド特定企画は反応率高くリターンも高い
つまり、価格訴求、ディスカウント、クリアランス、成人式など社会行事など、仕掛け側が期待するほど実績がでない。シーズンの早がけや商品絞込みの企画ほどリターンが高い傾向になっている。どのような企画を打てばリターンが多いかテストダイレクトメールや実践の数値から学習するとよい。学習効果が得られるようになる。

ビッグチーム編成
販促改革の現実的対応を提案する。目指す方向は数値による会話。どんな会議だろうが1対1の会話だろうが数値をベースに会話する習慣を社内に作り上げる。企画は計画書や数値表を使って必ず数値を記入する。販促実施の結果も数値で正確に把握し計画数値と対比する。すべて数値でコミュニケーションする。
この数値会話文化を作り上げるためにビッグチーム(筆者の造語)を編成する。
「情報を活用せよ」といってもセンスがなければなかなか浸透しない。それならチームで対応する。販促担当、商品部、データ作成担当の3部門のメンバーが一同に集結し、企画から計画、実施、評価をチームの共同作業で実施する。データ作成担当は計画や実績の数値情報を引っ張り出す役割、販促担当は企画の「良かった企画」「悪かった企画」の原因を引き出してもらった情報から読み解く。
商品担当は商品の販売スタート時期、仕掛けた商品の価格やグレードの成功要因や失敗要因を販促方法に合っていたかなど読み解く。
情報を解析し、意味ある情報にする専門スタッフ「データ担当」職責を明確にし、販促担当、商品担当、データ担当で企画会議や評価会議を実施できるような仕組みを編成し、日々難しくなるマーケットに対応できるようにする。