『ショック・ドクトリン』 ナオミ・クライン 岩波書店
 

1970年、カナダ生まれのジャーナリスト 『ブランドなんか、いらない』が世界的ベストセラーに。
米国資本主義の横暴を暴いた稀な本。まずは拷問から。

(本文より)「心理的方法をいろいろ伝授してもらった。捕虜が何を怖がり、どんな弱点があるかを学んだ。
ずっと立たせておく、眠らせない、裸にして隔離する、ネズミやゴキブリを独房の中に入れる、
ひどい食べ物を食べさせる、動物の死体を食事に出す、冷水を浴びせる、室温を上げたり、下げたりするなど」
米国CIA(中央情報局)が秘密裏に伝授する拷問。
二人のショック博士、拷問実験室で研究したユーイン・キャメロンと、
シカゴ派経済学『資本主義と自由』の自由放任実験を探究したミルトン・フリードマン。
規制撤廃、民営化、公的資金の大幅削減の3本柱を主張し、
チリ、アルゼンチン、ブラジル、ボリビア、ポーランド、ロシアにシカゴ・ボーイズを送り、
富を奪った実態をその後の公開資料からフリードマンのショック療法を明かす。
フリードマンの3本柱を実行すると格差が急速に拡大する現実を描く。
拷問は記憶を完全に払拭するため、まっさらになった脳に新たな記憶を畳み込めば、自由に操ることができる。
同じように、惨事をおこし(イラク戦争のように)、混乱で思考力を失っている間に、新たな経済思想をはめこむ。
これば惨事便乗型資本主義。

惨事便乗資本主義。民営化、規制撤廃、公的資金の大幅縮小を柱としたミルトン・フリードマンの
新自由放任主義(ネオコン)による多国籍企業の暴挙。
ショック便乗の実際例として、ピノチェット将軍によるチリのクーデターをはじめとするラテンアメリカ諸国、
サッチャー政権、ポーランドの「連帯」、中国の天安門事件、アパルトヘイト後の南アフリカ、ソ連崩壊、
アジア経済危機、9・11後のアメリカとイラク戦争、スマトラ沖津波、ハリケーン・カトリーナ、
セキュリティ国家としてのイスラエルなど、過去35年の現代史を総なめした、広範囲にわたるケースを検証、
豊富な取材と調査で新自由主義を攻撃。事件の裏側、真実が語られている。
ロシアのショック療法によって中小企業が次々と倒産に追い込まれた際、経済担当副首相の座にあった
エゴール・ガイダルの発言。
「ゆくゆくは外国企業に負かされてしまうのか?」
「その答えはあなた自身にかかっている。最も優れたものだけが生き残る」
「死ぬ奴には死ぬにふさわしい理由がある」
ブッシュ、ラムズフェルド、チェイニーの3人を激烈に批判。
ブッシュを「縁故資本主義」「大富豪資本主義」と記述。ブッシュの自由は、民営化された国家を多国籍企業が
食い物にする自由のことと述べている。
(ぼんぼんでお人よし、無能のブッシュを操った二人の悪人ラムズフェルドとチェイニー)