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『フランス史 W』 ミシュレ 藤原書店 |
1. この巻で登場する人物の要約。アンリ4世は賢人。ルイ13世の父親。アンリ4世は平和を信じ、民衆の苦しみを和らげることを期待し、幸福と豊穣を夢見ていた。手紙の中では彼はすっかり人間的な、飾り気のないものとなり、素朴にそのときの考えを語っている。万事においても、恋愛においても、庶民的という評判にもかかわらず、実生活の人間というより言葉の人間だった。王は痩せて敏捷、灰の髭をしていたが、精神はこの上なく若々しかった。とはいえ身体をひどく疲弊させており、ひどく痛めていた。 2. ルイ14世がもっとも自負していたのは政治の支配。また、ローマ教皇を重視した。新教徒プロテスタントの排撃の戦闘があちこちで勃発(ナント王令の廃止への反発)、竜騎兵による新教徒迫害が国の混乱をもたらす。恐怖が人々の心と名誉を打ち砕いた。人々の倫理は低下。修羅場の状況がまるまる一世紀に渡って続くことになる。ルイ14世は移り気な性分や気質によって、決定的な事柄をたった一人で決めていく。頑健な体現者だった。末期は、国内は疲弊、対外戦争の戦果は上がらず、暗いものになった。健康状態は、豪勢なヴェルサイユ宮殿での食事での旺盛な食欲で肥り、歯は全部抜け、最後は消化不能になった。ルイ14世の死は1715年、臨終の危機に当たって偽善の仮面を被った取り巻きの人々の本性が姿を見せる。もうご臨終と思われたとき、ヤブ医者の怪しげな薬が効いたのか、息を吹き返す。周りは慌てふためく。 3. この世紀の大事件はラ・ロシェル攻囲戦。カトリックとイングランド支援のプロテスタントの戦い。プロテスタントの反乱をきっかけに30年戦争が勃発。神聖ローマ帝国を舞台にして1618年から1648年に戦われた国際紛争である。実質は13年。この時代、カトリックとプロテスタントの殺戮。 ルイ王のカトリックと南フランス民衆のプロテスタントとの凄まじい殺戮はセヴェンヌの反乱という。岩波文庫『フランス・プロテスタントの反乱−カミザール戦争の記録』はカトリックに対抗した一人の住民の自伝である。ルイ14世の軍隊がプロテスタントの家族を襲撃する。「子どもは平和と調和の中で生きる。心を揺さぶられたら子どもはどうなってしまうだろうか。子どもにとって、母はすべてである。秩序であり、世界であり、神だ。だが、子どもの目は鋭い。分別を失った母、恐怖で取り乱した母、家族を救うために絶え間なく嘘をつき続ける母は、子どもにとってすべてが転覆したことを意味し、子どもの魂はその中で滅びかねない。正気を失うかあるいは逆に霊感を得るのだ」。プロテスタント教徒にカトリックへの改宗を迫るフランス国軍竜騎兵に強姦され、素っ裸にされ追いまくられる母親を見ている子どもについての記述。 イングランドでは名誉革命が起こり、自由思想が誕生した。この名誉革命が貴族社会を抑制し、民衆社会の誕生になる。ジェームス2世の専制政治、カトリック復興に反し議会を中心に反カトリック勢力を結集、王への反対運動が起こり、民衆の無血自由革命となったのが名誉革命である。
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