『銃・病原菌・鉄』 ジャレド・ダイヤモンド 草思社文庫(上・下)

 
著者はカリフォルニア大学ロスアンゼルス校医学部教授。2000年に刊行した本を
2012年文庫に。発売1ヶ月で26万部突破。

今から1万3000年前、氷河期が終わった時点で人類は、世界各地でみな似たり寄ったりの
狩猟採集生活をしていた。その後、各大陸は異なった経路をたどっていく。大陸ごとの
差異が生じ、やがてその格差が大きく広がっていった。16世紀には南アメリカのインカ
帝国を、ユーラシア大陸からやってきたスペイン人が征服するまでになった。スペイン人
が持ってきた「銃・病原菌・鉄」が要因だった。フランシスコ・ピサロ率いる少数の
スペイン軍がインカ皇帝アタワルパの大群を征服した要因は馬と銃、組織的な統率だった。
気候に恵まれたユーラシア大陸に住む人々は、狩猟採集をやめ、農耕や家畜の飼育を通じ
食糧生産に移行し定住生活を始める。農耕や家畜化によって食糧の備蓄が可能になり、
生産の上昇と共に農業に携わらなくてよい人が誕生、その人々が官僚となり、文字や
技術の発達を生み、部族を統轄し、拡大し、集権的集団を形成し、国家となる。
ユーラシア大陸は東西(緯度が同程度)、アメリカとアフリカ大陸は南北で不利であった
ため、近代まで狩猟部族が残っていた。これが国家発展に影響した。ニューギニア、
カリムイ盆地のハンセン病の集団感染。メキシコの天然痘患者は人口2000万人中160万人に
(1618年)、コルテスがスペインメキシコ征服。1412年、コロンブスがやってきたとき
800万人だったイスパニョーラ島(ハイチ、ドミニカ)の住民の数は1535年にゼロとなった。
1779年、50万人なったハワイの人口は、1853年に8万4000人に激減した。大陸の気候が
農業を発展させ国家となったが、農業に適していない大陸の人々は狩猟採集生活で生きる
しかなく、食料の備蓄ができず、官僚を生むことなく、集権国家の発展にならなかった。
中世までの1万5000年の歴史を語る。