ゾラが見た普仏戦争とパリ・コミューンの惨劇。スダンの闘いからパリ崩壊まで。
プロシア軍の捕虜となったナポレオン三世。戦場を彷徨する労働者・ブルジョア・
農民兵士たちをめぐる愛と別離の物語。
ジャンとモーリス(主人公)が脱走し、フーシャール爺さんの家にたどり着き、
負傷したジャンが果物所蔵庫であった「神秘的な部屋」で闘病生活を送り、
アンリエットが看病する。弟のモーリスからジャンを託されたアンリエットは
黒い未亡人服に身を包み、彼を看病しながら野戦病院に通う。二人の間には階級の
差を越えた、一種の親密さが生まれ、それが生活の中へと組み込まれていく。
ジャンはまだ戦場の大殺戮の記憶の中にあり、アンリエットは夫の死による痛手を
受けていたが「安らぎに満ちた生活」を感じる。彼女は弟の恩に報いるため献身的に
看護し、ジャンは無限の感謝を感じる。
そうしているうちに厳しい冬が到来し、空は灰色がかって物悲しくなり、雪が舞い、
風が吹き荒れ始める。彼女が通う恐るべき悲惨な野戦病院では、次々と負傷者たちが
死んでいく。ジャンはこのままとどまり、アンリエットと再婚し、家族を養う畑を
手に入れることができればと夢想するようになる。アンリエットもジャンに愛情を
覚えはじめる。
しかし、まだ回復していないジャンは戦いのためにパリに向ったモーリスを追いかけ、
パリに出かける。民衆がプロシア軍に降伏した政治家、ブルジョワジーに向って革命の
戦いを起こす。パリ・コミューンである。二人は、ジャンが予想した住居で再会する。
二人で戦いに挑み、玉砕する。1870年から1871年、ベルギー国境フランス領スダンでの
プロシアとの戦闘。近くのムーズ河は馬と人間の死骸で腐敗、猛烈な悪臭が立ち込める。
フランス軍の完敗である。方針のハッキリしない上官たちに苦労しながら、大勢の死者
をだした。プロシア軍はパリに向かい、ヴィルヘルム王、ビスマルク、モルトケ将軍が、
周囲34キロにわたって城壁を巡らす大包囲網。15の要塞と6つの離れた砦をもつパリは
牢獄のようになった。防衛軍は8万の兵士、1万4000の海軍陸戦隊、1万5000の遊撃隊、
11万5000の騎馬国民軍、30万の国民軍と人数だけは揃っていたが、実戦を経験し修練を
積んだ兵士はいなかった。道路は遮断され、軍事地帯にある家は取り壊された。4時間
に渡るプロシア軍の砲撃を受け、フランス軍は降伏した。
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