商品経営 「マーチャンダイジング」 略称MDG
 

4−2.MDG2つ目 「5W1H」で考える
単刀直入の表現で説明するとつぎのように表現できるでしょう。以下を「考える」ことから着手します。

4−2−1.「What」 何を売るか
「何を見せるか、基本にするテーマは何か、品揃え・陳列のシナリオ・ストーリーは何か」を検討し、政策として計画書に
記述します。

4−2−2.「When」 いつ売るか
「いつから販売を開始し、ピークはいつか、切り上げはいつか」を検討し、カテゴリー単位にシーズン開始、シーズンピーク、
シーズンエンド(終了)を政策として計画書に記述します。

4−2−3.「Where」 どこで売るか
「どこに陳列するか、店頭なのか店内の棚か、どの棚か、その棚のゴールデンラインなどどの棚段か」などレイアウト、動線
を考慮して商品陳列場所を検討し、政策として計画書に記述します。

4−2−4.「Who」 誰に売るか
その商品を誰に販売するかの定義です。独身女性、独身男性、主婦、高齢者男性、高齢者女性など、誰に販売する
商品なのかを明確にし、政策として計画書に記述します。自店の来店顧客年齢層、ライフスタイル、所得など把握してお
く必要があります。

4−2−5.「Why」 なぜ売るか
その商品を販売する理由は何でしょうか? 利便性(コンビニエンス)、食の健康、家計支援、食のライフスタイル、社会
イベント、など販売政策を検討し、計画書に記述します。なぜそれを販売するのか「なぜ」を5回繰り返すと販売するポイ
ントに接近できます。

4−2−6.「How」 どのように売るか
エンド陳列、大量陳列、コーナー陳列、店頭販売、ワゴン販売、関連販売、抱き合わせ販売、プリパッケージ、バラ売り
などどの様は方法で販売するか検討し、政策として計画書に記述します。時間帯、曜日販売の記述も検討し、計画書
に記述します。特売価格、定番価格、EDLP(毎日低価格)で販売するかの売価政策も記述します。

4−3.MDG3つ目 MDG作戦行動「商品部活動」
商品や国内外を含め同業他社の情報収集から販売予算・在庫予算・仕入れ予算の策定、商品調達計画、仕入れ
活動、販売活動、計画と実績のギャップの管理の具体的な追求が実践マーチャンダイジングです。このプロセスを「MDG
作戦行動」と表現しました。4つの商品部活動、3つの販売部(店舗)活動に分けて述べます。

4−3−1.商品部活動@ 商品調達の回転軸
業界や商品に関する情報収集を常時行い、知識を豊富に維持し、部門別売上計画から在庫予算、仕入れ予算を
立案し、商品調達先を計画します。グローバル化が進展する現代、調達先は中国、ベトナム、台湾など海外を検討に
入れなくてはなりません。為替の先行き検討も重要になります。
「何を」「いつからいつまで」「どこの取引先から」「どの価格帯(プライスゾーン・プライスライン計画)で」政策として計画書
にします。会社の「商品政策」であり「取引先政策」です。この活動は軍隊組織で言えば、参謀本部の活動と言えます。
商品調達計画を部門参謀が立案し、商品経営する回転軸です。マーチャンダイジング組織ではマーチャンダイザーの活
動です。

4−3−2.商品部活動A 取引先選定の回転軸
調達計画をベースにして取引先を選定します。主力取引先、サブ取引先、サブのサブ取引先と区分し、取引先の会
社名を記述します。総合卸売、専門卸売、産地取引先、市場取引先など主要な取引先を明確にします。
取引先の協力度、対応度、誠実度、研究度、情報力の5項目を「5点法」で評価して、取引先を選定します。取引
業者に正義感、真面目さがなくては顧客に愛される品揃えができません。相互に意見を出し合い、協力して売上荒利
益額を成長できる関係モードの取引先を選定します。
取引先選定回転軸の活動は、軍隊組織で言えば、力軍や海軍の師団長、連隊長の活動と言えます。マーチャンダイ
ジング組織ではバイヤーの活動です。

4−3−3.商品部活動B 商品セレクトの回転軸
主力取引先、サブ取引先などから仕入れ計画に基づき、商品をセレクトし、毎月の仕入れ数量を計画し、商品発注
する活動は商品セレクト活動です。バイヤー-は、調達計画にもとづき取引先と商談し、具合的に取引先ごとに単品別
の仕入れ数量を決める活動です。
 商品セレクトは産地のセレクト、品質のセレクト、旬(季節)のセレクト、価格のセレクト、海外商品のセレクト、安全・
安心のセレクトも考慮します。

4−3−4.商品部活動C 単品管理の回転軸
調達計画から取引先を選定し、単品をセレクトし、毎月の販売商品を仕入れし、販売します。販売計画と販売実績
情報は、部門別のギャップを追求します。部門別で計画が達成できていなければ、達成できていない原因は単品の販
売実績にあります。したがって、問題の原因である売れなかった単品の追求がこの段階の活動です。単品管理回転軸
です。計画達成には単品管理回転軸を猛スピードで回転させます。
単品管理の基本は「売れ筋」「売れ損」「死に筋」のコントロールです。「売れ筋」とは、非常によく売れているもの、「売
れ損」とは「本来売れるのに昨日売れていなかった」単品です。評価の物差しは、過去3週平均日販より昨日50%以下
など売れ損単品のピックアップ条件にします。「死に筋」とは、この3ヶ月まったく売れておらず、今後取り扱ってはならない
商品です。POSデータから「売れ筋」「売れ損」「死に筋」を確認します。この他「儲け筋」「見せ筋」があります。「儲け筋」
は荒利益額を稼げる商品、「見せ筋」は多くは売れませんが、店のイメージを創造するために品揃えする商品です。

4−4.MDG4つ目 MDG作戦活動「販売部活動」
 MDG作戦活動の販売部(販売本部、販促部、店長、販売担当者)の日々の売上促進、問題発見と問題解決、
技術習得の活動です。

4−4−1.販売部活動@ インストア・マーチャンダイジング 
お客様が入り口から入り、どのようなで動線で、滞留時間は何分で、立ち止まる回数、立ち止まる秒数、買い物かご
に入れる商品、その秒数など追跡します。滞留時間は10分から30分ですが、滞留時間の80%は単にウロウロしている
だけです。15品目を購入した顧客の滞留時間は20分。商品を見た平均時間は45秒でした。1品見る時間は2秒から
3秒程度です。滞留時間の96%は商品を見ておりません。これが実体です。できるだけ通路を通っていただき、商品の前
にできるだけ止まっていただき、商品を手にとっていただき、買い物かごに「ポィ」と入れていただくかが売上を成長させる要
因です。立ち止まってもらう力は「ストップ力」、買い物かごに入れてもらう力は「クローズ力」といっています。

4−4−1−1.ISM技術  レイアウトと動線 空間の管理
売場スペースは空間です。スペースは仕事に専念する場所です。スペースはお客様が気持ちよく買い物する場所です。
時には床から天井まで、ゴンドラの上、通路の空間を眺めます。フロア、冷ケース、ゴンドラ、エンドの配置空間です。
この空間で、より多くのお客様が来店し、商品の前に立ち止まり(立ち寄り回数)、商品を手にっといただき、買い物かご
に入れていただくこと(インバスケット点数)がスペースマネジメントです。
レイアウトの基本は「L字型」、入口と出口が別の方が理想ですが、一緒でも構いません。ただし、出入口は混雑するので、
混雑せず通路を奥に入ることができるように、配慮します。お客様の多くは右利きなので左回り(時計反対回り)が有利
です。左手に買い物かごを持ち、右手で商品をピックアップしやすいからです。科学的な証明はありませんが左回りを優先
します。陸上競技も野球も左回りです。

4−4−1−2.スペース(空間)管理@ 「フロアマネジメント」
フロアマネジメントの1つ目は通路の管理です。
両側にお客様が立ち止まっている状態で、その真ん中を通れる幅が基本です。せっかく通路幅をオープン時に十分確保
したのに、経過とともに通路にはみ出し陳列する傾向があります。オープン時の空間を維持するように店長は十分に注意
する必要があります。
フロアマネジメントの2つ目は「パワーアイテム」の陳列管理です。磁石商品とも表現します。もやし、豆腐、卵、納豆、揚げ
など日常食品(ディリー食品)がパワーアイテムです。パワーアイテムは隣同士、密着させ並べると、そこだけが人が群れてし
まい獲得できるはずの売上が獲得できなくなります。パワーアイテムは要所、要所に陳列します。

4−4−1−3.スペース(空間)管理A 「棚割り計画」
棚割りは空間と時間の整理整頓です。空間とは売場空間、時間とは春夏秋冬の時間です。季節ごとに空間のあり方を
計画するのが棚割計画です。
棚は棚番号があり、棚ごとに段と列があります。棚番号ごとに何の商品を何段目の何列にどのように陳列するか、陳列数
は何個にするかを決定していきます。棚割計画です。棚割マスタに、商品コード、商品名、フェイス数、陳列数を登録します。
棚割りはメーカーが「プラノグラフ」というソフトを用いて、バイヤーさんに提供しますが、メーカーさんは自社の商品をできるだけ
多く販売したいので、棚のいい場所、つまりゴールデンラインに自社商品を持ってくることが多く、注意が必要です。

4−4−1−4.スペース(空間)管理B 「フェイシング管理」
3−4.で述べましたが、商品のどの面をお客様から見える通路側に見せるかの管理です。同じ商品が2列なら2フェイス、
同じ面を通路側に揃えるのが普通です。詳細は3−4.を参照してください。

4−4−1−5.スペース(空間)管理C 「関連陳列」
通常、商品陳列は「食材関連」ごとに陳列しています。食材関連陳列と言っていいでしょうか? 野菜は野菜、魚は魚、
和日配は和日配、洋日配は洋日配です。関連陳列はお客様目線で陳列します。お客様目線とは「メニュー関連」陳列
です。真夏なら「きざみネギと絹豆腐」を関連陳列します。冷奴メニューです。生サンマと大根、それにゆずを関連して陳列
します。メニュー陳列でお客様の買い忘れがなくなり販売点数が増加します。 
会社側目線が「食材関連」陳列、お客様目線が「メニュー関連」陳列です。
 
4−4−2.販売部活動A ウェザー(天気)マーチャンダイジング

気温や雨・曇・晴れの気象条件で販売変化が起きることは誰もが知っていることです。天気と販売商品に相関関係があり
ます。雨が降ったら売れる商品売れない商品、気温が下がったら売れる商品売れない商品、という相関関係です。「雨が
降ったから売れなかった」と会議で予算達成できなかった理由を発表する担当者がおりますが、予算達成できなかった理由
として認めています。しかし、もっと科学的に気象条件と単品売上の相関関係を追求する必要があります。それが「真の問
題解決」です。

4−4−2−1.「雨」「晴」天気要因による売上相関関係
降水量一日10ミリメートル以上は客数が20%減少します。雨が終日降っていると、豆腐や刺し身は売れません。逆に雨が
降ると売れる商品があります。砂糖です。気温が下がるのでコーヒーや紅茶を飲みたい、砂糖が必要と連想します。晴で動
く商品は何があるでしょう。本日は洗濯日和、洗剤が売れます。明日、確実に雨が予想される場合、豆腐の発注は通常
の80%など数量発注に心がけましょう。ロスを出さなくてすみます。
天気マーチャンダイジングに強くなるためには、雨が降りそうな日、開店前に出勤した従業員に「外に出よう!」「空を見上げ
よう!」と外に出て空を見上げ、気温や風を感じる行動を時々やってみる必要があります。天気マーチャンダイジングの重要
性を認識できるようになります。

4−4−2−2.気温「15℃」「30℃」による売上相関関係
15℃以下になったらおでん、10℃以下なら鍋が急速に売れ始めます。25℃以上になってきて動く商品は清涼飲料水、
冷麦、水羊羹です。27℃以上になるとスイカ、アイスクリームです。28℃以上になると鰻、30℃以上になるとかき氷が動き
ます。