ロンドン最大手のSM、TESCOの顧客戦略について詳しく解説した弊社荒川の講演をメインに、山野印刷の細野氏が『チラシ制作の現状とその打開』、日本郵政公社・井上氏は『レスポンスメディアとしての郵政活用法』、そしてフュージョン・佐々木氏が『顧客ID付きPOSデータ活用による、マーチャンダイジングと販促アクションのケーススタディ』と題して、それぞれの立場から販促について講演を行った。荒川の講演内容は以下の通り。
◇『TESCO顧客戦略から・・・Loyalty Marketing 』 代表取締役 荒川圭基
講演のベースとなっている『SORING POINTS』は、英国小売業ナンバーワンとしての確固たる地位を築くまでの歴史とその驚くべき顧客戦略について述べたものだが、講演では同社の顧客戦略とテスコクラブカードについて詳しく解説した。
英国ハートフォードシャーのチェスナットに本社を置く同社は、1931年創業で1961年よりSMに参入、現在は英国1982店を中心に、アイルランド77店、ハンガリー53店ほか、タイ、韓国など2291店を展開している。(同書より2003年現在) ロイヤルティプログラムであるテスコクラブカードを開始したのは1993年3月(実験店の3店舗)で、1995年2月には600店全店導入を決定した。『Because
we can(われわれはできるのだから)』の信念のもと、電話やテレビ広告で大々的にPRし、2週間で700万人の顧客を集めた。そして1995年5月から年4回、500万通のDMを発送した。これは過去20倍の発送数で、バウチャーとよばれる買い物券1400万ポンド(280億円)相当を同封した。
このバウチャープログラムとは、5ポンド(約1000円)ごとに1ポイント(1ポイント=5ペニー;つまり1%)をバウチャー(買い物券)として年4回還元するというもので、顧客にも従業員にも分かりやすいプログラムとなっている。
『消防車のホースから水を飲むようなもの』と競合のセインズベリーが活用しなかった膨大な顧客データをぶんまわしはじめた。データ分析会社を設立し、25名のスタッフが会員1000万人の月間明細データ16億件の10%を分析し、顧客の購買行動や顧客プロファイルの洞察を実現した。1%のデータを抽出し、8500アイテムから3600万通りのペアを作成の上、80のバケツにして購買の組み合わせをパターン化したほか、クラスター分析では、27のライフスタイルを想定し、この2つから12万通りのクーポンパターンを作りだした。
これらテスコの戦略は、顧客の購買行動および消費態度を変更する戦略であり、データを活用して、誰が顧客であるかを明確にした真のCRMであると述べ、日本においてここまで実施している小売業はほとんどないと締め括った。
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