流通再生戦略
 
まえがき
 
まえがき−再生の条件
 
  昭和58年(1983)、ダイヤモンド社より『小売流通業の再生戦略』を執筆して23年になる。そのまえがきに次のように書いてある。
大手小売業が誕生して今日のような巨大企業に成長するまで、わずか20年余り。これほどの短い時間で、ビッグビジネスに成長した業界は稀といえる。短期間で大企業に成長できた要因は、なんであったろうか。それは、この時期におけるわが国の高度経済成長によるものである。この時代、小売業は特別な技術なくして誰もが成長できたといっても過言ではない。

現在、その大手小売業は、巨大なるがゆえにもろもろの問題にとりかこまれている。高度経済成長時代における個人消費支出の増大に基づく売上高の上昇は、すでに過去のものとなりつつある。強大化した組織は、巨大なるがゆえに数々の弱点も顕在化しつつある。

いま、小売業は新しい時代を迎えているといってよい。成長の歴史における一つの転回期である。それは、量から質への脱皮の時期であり、ハードウェアからソフトウェアへの転回期でもある。ここでいうソフトウェアとは、経営に必要な技術体系はもちろんのこと、人間の知恵・理念を含めての意味である。(後略)

このころ、ダイエーはじめニチイ(現マイカル)など量販店は、売上前年比割れ、3分の1の店が赤字という停滞期だった。1兆円、2兆円という借金をつくり、倒産も致し方がないという現在の状況とよく似ている。ほぼ20年という歳月、小売業者は何をしてきたのであろうか。環境に身を任せ、勉学もなく、無為に日を過ごしてきたと言わざるを得ない。

最近、特に感じることがある。「驕り」だ。

巨大になり、取引先がちやほやするあまり、己の能力を顧みず、あたかも自らが権力者のごとく振る舞う態度である。態度ばかりではなく、思考そのものが「驕り」の固まりである。この驕りが小売業を弱体化させた。

この「流通再生戦略」では、小売りに携わる人々に、驕りが成長を阻んでいること、驕りを捨てて小売りの原点に戻るべきことを述べていく。


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